小林よしのり著『戦争論』は、どう読まれているのか(1/3)

劣等感を拭い去れた気がする

M(27歳・女性)

2001年 6月5日
通巻 1078号

 はじめに―確かにちょっと救われた気がしました。なぜって だって日本人は極悪非道って言われつづけてきたし、反対のこと言われることはなかったじゃないですか。
 この本のすべてが正しいとはとうてい思っていませんが、少なくとも日本人だけが悪という図式をもっと外側からも調べたほうがいいんじゃないか という気分にはなります。
 「こんなにひどいんですよ」とウソの写真を使ってまで日本人の悪人ぶりをアピールしている人が実際にいることを引き合いにだし、中国人の方が残酷であったと結論付ける。実際、自分たちがそんな残酷なことを思いつかないので、確かにおかしいなと感じます。事実は私たちにはわからない。けれど、他人から残酷な人たちと言われつづけてきました。この劣等感は拭い去れない。この本を読むと、少しでも反論できるのかもしれない、と感じるのが正直なところです。
 堂々と言うことではないですが、私には知識がありません。今まで、南京大虐殺も教科書に載り、従軍慰安婦も教科書に載り、事実であるなら載ったほうがよい、と考えて来ました。今でも従軍慰安婦が強制的にさらわれてきたという事実はあったのではないかと思っていますが、軍がさらってくることを指導していたというのには疑問です。
 日本人がさらった=軍が強要したということはなかったように思えます。
 証拠のない裁判をされるのはかなわない、と感じました。悪いところはきちんと謝っていくのは大切だけれども、事実を自分の目で調べていくことに限界があるからといって、すべてを信じてはいけないと思います。
 しかし、この本はひどい。考え方のちがう人を絵を使って馬鹿にすることにより、「馬鹿にされたくない」という心理が働くのをうまく利用して、内容の是非に関わらず、「その意見を言った場合、こんな風に馬鹿にされてしまう。確かに書いてることも事実に違いない。意見変えようかな」という気分になる効果は絶大です。
 だから、この本もすべては信じません。けれど、考えるキッカケになるので、是非一度は読んでみて欲しいです。 


(終)

 

>> (2/3)「個人が崇高であることと、国家が崇高であることは、同じではない」

>>> (3/3)「『目から鱗』も『身につまされる』も皆無だ」

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