「関西制覇」を目論み頓挫した

グリーンコープ・行岡の度し難い堕落(2)

生協にとって大きいことは
本当にいいことなのか?

大阪・K生

1999年 9月15日
通巻 1021 号

 本紙1014号で、生協とは名ばかり、まるでヤクザまがいの「関西なぐり込み」を画策した「生活協同組合連合会グリーンコープ連合」(本部・福岡市)の専務理事・行岡良治の問題を取り上げた。これに対して「生協運動が今どうなっているのか、そことの関連で取り上げて欲しい」との意見がいくつか寄せられた。今号ではその1つ、大阪Kさんからの投稿「生協にとって、大きいことは本当にいいことなのか」を紹介する。


中身抜きの拡大路線に突っ走った
「市民生協」の惨状を反面教師に

 グリーンコープ・行岡専務理事の記事、興味深く読みました。生協同士、組合員との関係の具体的な在りようを問わぬ生協運営がどうなって行くか、まざまざと見せつけられたような気がします。
 ところで、貴紙の記事でもう少し掘り下げて欲しかったのは「生協にとって、大きいことは本当にいいことなのか」という点です。生協の主体が地域の生活者である以上、生協運動にとっては「地域」が基本のはずで、生協の規模や運営自体も地域それぞれの事情によって異なってくるのが当然だと思います。そこを無視して「関西侵出」「全国展開」をしようとすれば、「覇権主義」にならざるを得ない―これは理の当然ではないかと思うのです。
 その意味では、生協運営の中身を問わずに拡大路線に突っ走った日本共産党系の「市民生協」がどうなっているのか、反面教師として考えてみるのもいいことだと思い、ペンをとりました。
 1997年末、大阪の「いずみ市民生協」の創設者で実質的な経営者である名嘉・副理事長(当時)の生協私物化・乱脈経営が内部告発によって暴露され、大きな社会問題となりました。いずみ市民生協は、名嘉が大阪府大生協の全面的なバックアップを受け、全国九位の売上を持つ生協に発展させてきたもので、言わば共産党系の市民生協の「優等生」、名嘉は日本共産党にとっての「功労者」のはずでした。その「功労者」が乱脈経営の挙げ句、腹心であった日本共産党員の職員から内部告発されたのですから、当時も関係者の間では様々な憶測を呼びました。
 この件については、貴紙でも具体的事実や経過について紹介されていたので詳しくは触れませんが、ワンマンで外部規制のきかなくなった名嘉を、他の市民生協と日本生活協同組合連合会(日生協)が組んで追放した、というのが真相ではないかと思います。

売上2位の「コープさっぽろ」、独裁支配と乱脈経営で破綻

 そして時を同じくして、日生協や市民生協にとってもっと重大な問題―日生協の中で「コープこうべ」に次ぐ売上を誇り、「市民生協の星」と言われた「コープさっぽろ」の経営破綻―が勃発していたのでした。
 コープさっぽろの出発は、日本共産党の「北の拠点」だった北海道大学の自治会委員長だった河村征治が設立した札幌市民生協。河村は大学の民青活動家を生協に投入して経営を拡大、大手スーパーが北海道には進出しておらず、競争相手が地元小スーパーだけだったこともあって、当初から店舗展開を軸にして北海道全域を制覇します。結果、組合員数は道内世帯の半分近く、道内の食品小売はトップシェア、供給高2000億円といずれも断トツ。北海道は市民生協作りの「手本」、河村は「共産党の星」と言われることになりました。
 ところが、バブルの崩壊以降、店舗の売上がダウン。新規店舗による乗り切りを図るも、悪循環の自転車操業に陥ります。経営悪化に輪をかけたのが、長期の「河村独裁体制」による組織・運営の硬直化。多重リース、商品代金支払延期、欠損の子会社への売却、内部留保放棄などの粉飾決算は常態化。加えて、配当を高くして大口の出資、投機目的の資金をかきあつめていたために、経営危機が表面化した途端に大口の返済要求が相次ぎ、一気に資金繰りが破綻したのです。
 売上第2位の生協が破綻することの社会的影響と連鎖反応を恐れた日生協は、急遽100億円の「連帯基金」を創設、日生協専務理事を立て直しのために派遣して、河村を関連会社に追放しました。

「連帯・共生」も「平和と民主主義」も所詮同じ「お題目」

 以上が大雑把な経過ですが、全く同じような問題が、時を同じくして北と西の「市民生協のホープ」と言われてきた生協で発生したのは、決して偶然とは思われません。
 70年代の生協運動の右肩上がりの成長の中で、人・金の動員力という点で、生協運動は日本共産党の大きな運動基盤の1つとなっていきました。が、大手スーパーの参入などによる競争激化を、市民生協が大規模化(合併・統合)と大規模店舗展開を軸とする灘生協方式への転換によって乗り切ろうとしたあたりから、日本共産党と市民生協との関係はおかしくなっていきます。要は図体が大きくなるにつれて、生協の方は経営第一、現場第一へと傾斜していき、党の統制、影響力が及ばなくなったのです。(ちなみに現在、日本共産党の方は、「新婦人」などを動員して「産地直送センター」を組織化、市民生協を牽制するに至っています。)
 党の統制が効かなくなったことが悪いとは思いませんが、それはまた別の問題として、「コープさっぽろ・河村」にせよ「いずみ市民生協・名嘉」にせよ、中身抜きの拡大路線と独裁体制がもたらした必然的な破綻、堕落であることは間違いないのではないでしょうか。
 グリーンコープの理念は「連帯」「共生」だそうです。しかし、冒頭に述べた「生協同士、組合員との関係の具体的な在りようを問わぬ生協運営」の下では、「連帯」「共生」も「平和と民主主義」も所詮は同じ「お題目」に過ぎません。加えて行岡専務理事も「事大主義の独裁者」とか。現在、一旦は断念表明を余儀なくされた関西侵出の機を虎視眈々と窺っているそうですが、生協にとって大きいことは本当にいいことなのか、河村や名嘉を教訓に、一度ゆっくり自省してもらいたいものです。

 

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