[経済コラム1]米軍イラク撤退見越して金価格急騰

2003年 12月15日
通巻 1164号

 このところ、金の価格が急騰し、一オンス=四〇〇jの水準を突破しました。これは九六年三月以来、七年九ヶ月以来の高水準です。

 金価格は経済の健全度を映し出す鏡のようなもので、投資家は、貨幣経済が不安になると株式・証券などを売って、金など実物へ資産を移動し、資産防衛を図っているからです。

 〇一年一月、二六〇j近辺で推移していた金価格は、〇二年一月に三〇〇j台に達し、〇三年一月には三五〇j、年末には四〇〇jという急騰振りです。

 この原因については、米国における投資信託の不正運用などのほか、「イラク情勢が悪化し米軍が追い出されるのではないか」、との懸念が投資家の間で広がっているからだ、と一二月九日発行のエコノミスト、一二月九日付けの朝日は指摘しています。

 金価格とイラク情勢とが連動しているという事実は、今回のイラク戦争の意義を示して余りあります。

やはり石油利権確保が目的のイラク戦争

 米大統領ブッシュは、イラク戦争の目的を「イラク民主化」としましたが、彼の本心は中東における米国の石油利権の確保にありました。中東地域全体に持っている米国の石油利権にとって、フセイン政権の民族主義が邪魔だったからでした。

 それ故に、もしこの戦争でイラクから米軍が撤退することになれば、これがサウジへ波及し、中東地域全体で米軍の石油利権が危うくなります。

 イラクからの米軍撤退、という「悪夢」は、中東全域に及ぶ米石油利権の喪失という最悪の事態へ、と繋がっていきます。

 投資家が資産を紙幣から金へ移動させているのは、彼らがこの恐怖を感じているからです。

 国連で米英と独仏が妥協しましたが、未だに独仏はこの戦争に人も金も出していません。米軍主導の占領行政をブッシュが手放そうとしないからです。

 フランスは、イラクに石油利権を持っていながら、米国との間合いを慎重に計っています。彼らは、米国が頭を下げて国連に頼み来るのを待っているのです。

 こんな時に、寄りにもよって小泉がしゃしゃり出て、イラクに石油利権を持たない日本が自衛隊を送る。本当に小泉首相は「いなかっぺ」、「外交音痴」です。      (W)

人民新聞社

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