イラク戦争を読む(2)

翼賛戦争報道のウソ

2003年 4月15日
通巻 1141号

 ブッシュが言った。「非道で残虐な支配者が、今まさに終焉を迎えつつある」と。だが、ブッシュがフセインに投げかけるすべての言葉は、ブッシュが己の姿を告白する言葉でしかない。それを、現在の翼賛戦争報道のウソの検証から始めよう。
 テレビ・マスコミが言っている、「民間人の死傷者が、誤爆が増えている」と。真っ赤なウソである。武器製造業者が、民間人を「ソフト・ターゲット」と名付け、ペンタゴンの各種マニュアルが指示しているように、「民間人を狙い撃ちすることによって、当該国民に当該政府に対する不満と反感を増幅させる」ことが「主要戦略」なのである。ある現地レポーターが、テレビ画面で吐き捨てるように言ったが、「これは、まがいもない無差別殺戮」なのである。
 次に言おう、イラクがWMD(大量破壊兵器)を有しているから、武装解除のための戦争だと。こんな大義は世界のどこでも通らない。世界の大量破壊兵器の90%以上をロシアと共に独占し、今まさに、ディジー・カッター、バンカー・バスター、クラスター爆弾、E爆弾、劣化ウラン弾、挙げ句の果てはMOAB(=爆弾の母の母)などといった明らかにジュネーブ協定違反、国際法違反の武器を行使しているのは、どこの政府なのか?国連でイラク攻撃容認を議決すれば、逆に各種武器・兵器制限条約の規制を受けるからこそ、国連決議を最後まで索めたというポーズを見せながら実際は、国連決議を蹴るという挙に出たのである。

 よく、ことの発端はイラクのクゥエート侵攻であったとの論評を見かける。これは根本的に間違っている。
 もと米国司法長官ラムゼー・クラークは次のように書いている。
 「この戦争は、イラクの最初の軍隊がクウェートに侵入するはるか以前から米政府により計画されたものである。米国政府は、まずクウェートの王族を利用してイラクに侵攻を行わせるように仕向け、次にこの侵攻によりイラクに対し大規模な攻撃を行う大義名分を得ようと考えていた。そして、攻撃により、イラクを崩壊させることで、湾岸で支配権を確立しようと考えていたのだ。湾岸戦争は、ブッシュ大統領が言うようにクウェートの主権のために闘われた戦争ではない。湾岸地域とその石油に対し、米国の覇権を確立するために行われた戦争である」と。
ブッシュ政権は湾岸戦争の前年まで、農務省をを通じて、「農業無償援助」という名目で資金を捻出し、アメリカ企業から大量破壊兵器をイラクに売却し続けていた。しかし、中東域内に米英などの利権の障害となる軍事強国が出現することは何としてでも避けねばならないし、戦略家フセインによって、イラクとイランが接近するという悪夢にも脅かされた。かくして、イラクはまんまと、アメリカの「罠」に落ち、クウェート侵攻へと走らされたのである。

 アメリカは、WTC(世界貿易センター)の倒壊を、日本への原爆投下直後に初めて使われた「グラウンド・ゼロ」という言葉で表現し、今またイラク攻撃の際に、原爆投下作戦の時に使われた「衝撃と恐怖」という言葉を作戦名に使っている。全く、日本人は愚弄されているのである。
 原爆投下は、本質的狙いにおいて、冷戦開始を告げるものだったが、その後、湾岸戦争・ユーゴ空爆という、実質的に核戦争へとひた走る戦争が行われ(劣化ウラン弾などの使用)、今またそれが四度繰り返されているのである。
 米国政府の口はウソを言うための口である。アメリカは、ベトナム・ラオス・カンボジアへの賠償も行っていない。近いところでは、アフガンの復興もほとんど行っていない。この国は、自動車と軍需産業と石油の国である。石油がなければ兵器も自動車も機能しない。したがって、軍需産業を支配しているのは実質的に石油産業になっている。アメリカにとっては、常に国益=石油=戦争なのである。したがって、石油をはじめとした利権に群がる限り、アメリカが常に第三世界で独裁政権を支持せざるを得ないという宿痾は直らないし、アメリカ政府が言う「民主主義」というものは、真っ赤なウソにならざるを得ない。

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人民新聞社

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