【投稿特集】私にとっての9.11

軍事政権化するアメリカ

秋田孝(男・50代)

2002年 9月15日
通巻 1121号

 1992年の湾岸戦争ではイラクにスカッドミサイルを撃ち、空爆と戦車を動員して兵器の実験場とまで言われたアメリカのイラク侵攻。1999年のボスニアでは、まるで戦争ゲームをするように夜間の空爆で光る爆弾の閃光をテレビで全世界に放映し、その軍事的優位を全世界にアピールした。
 9・11事件が発生するまでは、中国脅威論をぶちあげ中国を敵とし、そのための軍事攻撃態勢を作ろうとしていた。 
 基本的に現在のアメリカの産業構造は、宇宙・航空・軍事産業が牽引する形をとっている。軍と兵器産業と政官が癒着している、世界トップレベルの軍事大国である。
 9・11事件は、アメリカ本土への初めての攻撃とあって、そのショックは大きかった。
 この攻撃で安全であったはずのアメリカ本土も安全ではないという現実を突きつけられ、恐怖心が支配した。無いはずの安全を求めるために民主主義は抑制されても仕方がないという論が、大手をふるっている。
 国土防衛庁が9・11事件以後に新設された。その規模は、ペンタゴン(国防総省)に匹敵する予算と人員を投入するほどである。ホームランドディフエンス(国土防衛)意識が台頭し、国内の締め付け−軍事政権化の一環である国内抑圧を強めていこうとしている。このことは、アメリカ民主主義を標榜してきたアメリカが、それすら投げ捨てなければならない段階になっていることを示している。
 対外的には、アフガニスタンのタリバン政権を軍事的に破壊しカイザル傀儡政権を作っても、アメリカの安全は保障されない。演習という名目でフィリピンの主権を踏みにじるアブサヤフの掃討軍事作戦を米軍が行っても、アメリカの安全は確保されない。
 「悪の枢軸」といってイラン・イラクを攻撃の対象としても、アメリカの安全は確保できない段階になっている。
 チェイニー副大統領は、「今後20年から30年はテロとの本格的戦争を続ける」と公言している。それは、20年、30年かかってもアメリカはそれらとの戦いに勝利できないことを表明している。それは、勝利できない本格的戦争のために軍事政権化していかざるを得ないことを表明している。

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人民新聞社

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