パレスチナにおける
イスラエルの大虐殺
―アメリカの責任とアラブの屈辱―

【2001年10月25日、ベイルートの独立系新聞
「アズ・サファール」の社説より】

2001年 11月25日
通巻 1094号

「兄」ブッシュをまねるシャロン

 シャロンが、パレスチナの地で大虐殺を犯している。さらにアメリカ政府は、この「国家テロ」を公式に容認している。これを考えるとヒステリー発作を起こすというのは、誇張でも何でもない。シャロンは彼の「兄」ともいえるブッシュと張り合っており、「兄」をまねているのである。
 ジョージ・ブッシュが戦争を追求し始める前から、すでに犯人はビン・ラディンだと発表していたように、ブッシュの「兄弟」であるシャロンは、すでに「ビン・ラディン」に相当する人物をもっていた。つまり、シャロンは、パレスチナ自治政府議長をアメリカの「無限の正義」作戦の中で手配されているあの逃亡中の無法者になぞらえ、アフガニスタンと国際的に孤立したタリバン政府の影を、パレスチナやパレスチナの人々やインティファーダ(まだそれ自身を「独立戦争」と宣言する時点にまで至っていないが)に投じていたのである。
 血に染まった経歴をもち、人種差別主義者であるシャロンは、イスラエル観光省の暗殺以前から、パレスチナ解放勢力指導者をミサイルで暗殺し、大砲と爆弾で民衆を殺害し、家々を破壊し、農作物や木々や思い出を焼きながら国家テロを最高度までに高めていた。
 シャロンの部下であり支援者であった観光相は、犠牲者の血を吸い、パレスチナ人から強制的に奪った土地において観光を宣伝することを行ってきた。
 イスラエル軍は、パレスチナの自治権を侵害して、自治区内を急襲しながら、繰り返し血で洗われたこの土地の四方八方に死をまき散らし、パレスチナ自治政府を破壊している。しかしこのパレスチナにおける大虐殺の実行は、観光相が暗殺される以前からであったのだ。
 犠牲者の血の中で泳ぐことから所有者から強制的に奪った土地において観光を宣伝することまで行ってきた。
 観光相暗殺以前からイスラエルは、パレスチナ自治政府を破壊し、神聖なるインティファーダの主要な幹部を系統的に暗殺してきた。また、ブッシュ政権は、これらイスラエルの蛮行をやめさせるために直接介入することを拒否すると騒々しく宣言したが、それは、観光相暗殺以前であった。ブッシュは、多くの血が流されているにもかかわらず、アラファトに会うことすら拒絶してきたが、これも観光相暗殺以前からであった。




アラブ人への軽蔑的・屈辱的扱い

 シャロンに圧力をかけることができない「無力さ」を正当化するため、アメリカ政府は使い古された弁解を用い続けている。彼らは、あるときはパレスチナ人のことを野蛮な民族だと批判し、またあるときは愚劣で下等だと侮辱する。そして、パレスチナ人に対してだけでなくすべてのアラブ人も同様に野蛮だと非難することで自らの無力さを正当化しているのだ。
 アメリカ合衆国のアラブ人への扱いは極めて軽蔑的であり、我々は、屈辱を感じる。アフガニスタンに対する不正な戦争を行っているアメリカ主導の国際同盟への協力が必要なときでさえ、アメリカは、アラブ人に対して尊敬もせず、アラブ人を全く重要だともみなさない。
 シャロンは、都市や村々を破壊しながら、武器を持たないパレスチナの人々に対する戦争によって「成功」している。その「成功」とは、アフガニスタンの病院や発電所や浄水システム(すでに数と能力において限られているが)を含む都市や村々を系統的に破壊することで、アメリカが「成功」と評価していることの縮小されたイメージということができる。
 報復戦争のための国際同盟からイスラエルを外すというアメリカの決定は、単にアラブ人に「好意」を示すためのむかつくような演出によるものではない。それは、パレスチナ人を殺すために、そして「自治政府」の立場を弱め非常に小さな役割で終わるよう、もともと権限を制限され貧困に打ちのめされている「機関(自治政府)」を破壊するために、イスラエルにフリーハンドを与えその手を汚さない状態にしておくことを可能にさせる意図からであった。



パレスチナの血に対する責任

 シャロンは、「アラブは幻想に過ぎない」という彼の「歴史的」理論をアメリカに断言してみせる。
 一方アメリカは、アラブを軽蔑し、アラブを束ねる共通の絆や単一のルーツなどの汎アラブ統一の主張を軽蔑している。アメリカは、アラブについてのイスラエルの理論を採用し、アラブ人を懲らしめる道具として、イスラエルを使っているのだ。
 アラブ諸国政府は、アメリカへの献身を宣言し、アメリカが指導している「国際テロリズム」に対する戦争において反テロ「国際同盟」の外側からアメリカを助けようと腐心しているが、これは、本末転倒も甚だしい。
 ものの道理に従うならば、アラブ諸国政府はアメリカ政府に対してではなく、パレスチナ人の流された血に対してこそ責任を負っているはずなのだ。
 彼らは、共通で統一された最小限の立場をもつことをあきらめ、かつては神聖な結合であったルーツを捨て去った。、彼らはイスラエルの軍事力におびえ、アラブを拒絶する西側世界に加わりたいという欲望から、分解してしまった。
 シャロンは、アメリカのナイフをもって、そしてアラブの共謀のように見えるものに怯えてパレスチナの人々を虐殺する。
 もしこれまでアラブ諸国が、彼らの役割や能力の(それが否定的であれ肯定的であれ)重要性を確認できず、現在の悲しむべき状況を変え得ないとすれば、彼らの存在感をいつになったら確立することができるのだろうか。一つの国家としてでなくても分かれた国家としてであれ、信仰や原理をもつ者としてでなく、利害関係をもつ集団としてでさえ、原則的立場と存在感をいつになったら確立することができるだろうか。殺害されている家族としての仲間意識をもつ同胞としてでなくても現在行われていることの犠牲者として、彼らの存在感をいつになったら確立できるだろうか。今も女や子どもや男たちの死体はパレスチナ平原にまき散らされている。これが神聖な土地と呼べるであろうか。   

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