〔アメリカ・同時多発テロ〕アメリカこそ戦争・テロの元凶

ブッシュは「報復戦争」を止めよ!
小泉政権は米政権に追従するな!

民衆の怒りを武力で圧殺することはできない

2001年 9月5日
通巻 1086号

 9月11日午前、アメリカで4機の民間航空機がハイジャックされ、うち2機がニューヨークの世界貿易センタービルに、1機がワシントン近郊の国防総省に、乗客もろとも突っ込むという事件が発生した。特に、世界貿易センタービルについては1機目の突入による火災、2機目の突入の瞬間からビル崩壊に至る過程が映像でとらえられ放映されたために、全世界の眼を釘付けにし、異様な衝撃を与えた。
 アメリカ史上初めてと言っていい「本土」への攻撃、しかも政治と経済の中枢部がほどんど無防備なまま攻撃に晒されたという事態に面子を潰され狼狽したブッシュ政権は、報復を宣言。「首謀者」とするオサマ・ビンラディン氏と同氏を匿っているとするアフガニスタンのタリバーン政権を主たる標的に、半ば恫喝で世界各国の支持を取り付け、全面的な戦争体制の構築に血道をあげている。
 ブッシュは言う。「これは戦争だ」「自由と民主主義、文明への宣戦布告だ」と。私たちは思う。「そうだ、これは戦争なのだ。世界の盟主、世界の警察を気取り、侵略と国家テロ=戦争をほしいままにしてきたアメリカ帝国主義に対する戦争なのだ」と。そして、その意味において私たちは今回の攻撃を支持する。

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世界中で戦争と殺戮を繰り返してきたアメリカ

 そもそも、アメリカに「テロ」や「戦争」を非難する資格はない。民族の自立、生存の権利を主張し、石礫や小銃で抵抗するパレスチナの人々を戦車や武装ヘリで虐殺し続けるイスラエルを、中東における自らの橋頭堡として一貫して支持・支援してきたのは誰なのか。自らの意に沿わないイラクを「テロ国家」と決めつけ、ミサイルを撃ち込み無差別爆撃を繰り返し、兵器の「在庫一掃セール」とも言える湾岸戦争を引き起こしたのは誰なのか。その他、旧ユーゴ、グレナダ、ベトナム等々、世界中に戦争をばらまき、民衆を虐殺してきたのはアメリカではないか。アメリカこそが最大の「戦争・テロ国家」なのだ。
 ベトナム戦争での敗北とその後遺症から、アメリカ軍の基本戦略は「米兵が1人も死なない戦争」に転換した。圧倒的な軍備・技術力を背景に敵を好き放題に殺傷する、これほど傲慢な理屈はない。その象徴が湾岸戦争であり、武装ヘリの赤外線暗視カメラで逃げまどうイラク兵を補足、テレビゲーム感覚で文字通り「虫けらを殺す」如く殺戮する陰惨さに、軍中枢部からすら「人間としての頽廃ではないか」との批判が出された。
 狼狽してシェルターに逃げ込んだ挙げ句に登場したブッシュが「これは戦争だ」とつぶやいた事実は、こうしたアメリカの傲慢と頽廃を象徴するものだろう。世界各地で現実に戦争を継続し、民衆を殺戮しておきながら、自分たちだけは「安全」「平和」「豊か」に暮らして当然……、今回の攻撃は、こうした一方的で都合のいい思い込みが錯覚に過ぎないことへの重大な警告だったのではないか。

アメリカへの怒り・怨嗟は世界中に

 もう1つブッシュ政権が肝に銘じておくべきことがある。それは犠牲者への追悼の思いとは別に、世界レベルで見れば、今回の攻撃に公然とであれ密かにではあれ拍手喝采をした人の方が多いだろうということである。
 特に既成社会主義の崩壊以降、「唯一の超大国」となったアメリカは、圧倒的な軍事・経済・政治力を背景に、自らの論理・規範を「絶対の正義」として世界各国に押しつけてきた。いわゆる「グローバリズム」である。しかし今や、その矛盾は覆うべくもなく、前述の世界各地で続く戦争として、拡大する貧富の差や飢餓として、深刻な環境破壊として、世界中の人々を苦しめている。当然、怒り・怨嗟は「唯一の超大国」アメリカとその同盟者たる「先進国」に向けられている。WTOやサミットへの世界的な抗議行動はその象徴でもある。
 ブッシュがいかに「自由と民主主義、文明への宣戦布告だ」と愛国心を煽り、恫喝で世界の支持を取り付けようと、「敵」は世界中に満ち満ちた不定型な怒り・怨嗟なのであり、現状を変革しないかぎり「武力」で押さえつけられるものではない。すでに各方面から指摘されている通り、報復は新たな抵抗と報復を呼び、膨大な犠牲を払った挙げ句、苦い敗北を噛みしめなければならないのはアメリカなのだ。

 

アメリカの「面子」と「威信」そして「権益」を守る戦争

 

 ペンタゴンをバックに大統領になったブッシュはこの間、次々と歴史に逆行する諸政策を打ち出してきた。ミサイル防衛構想、包括的核実験禁止条約からの離脱、京都議定書からの離脱、人種差別世界会議ボイコット、原発推進、等々。そして今また「米兵が1人も死なない戦争」まで転換、「国民に犠牲も覚悟せよ」と迫りつつ、大規模な報復戦争を強行しようとしている。それは「自由」や「民主主義」、ましてや「文明」を守る戦争などではない。アメリカの「面子」と「威信」、そして「権益」を守るためのものでしかない。
 そして我が小泉政権は、またまた何の展望も方針もなくひたすらアメリカのご機嫌を伺い、追従しようとしている(アメリカからバカにされ、アテにもされていないにもかかわらず)。そればかりか、調子に乗って「後方支援のための法整備」だの「有事立法」まで言いだした。ドサクサ紛れの戦争体制の整備、参加を許してはならない。
 繰り返し強調するように、アメリカこそが戦争・テロの元凶なのであり、アメリカが戦争とテロを止めない限り、世界から戦争・テロは無くならない。アメリカは戦争・テロ・報復を止めよ!小泉政権はアメリカ追従を止めよ!の声を各地から!

 

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