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2016/2/2更新

核保有国・同盟国による二重基準
朝鮮の核を非難する資格が日本にあるか

ジャーナリスト/同志社大学大学院社会学研究科博士課程教授(京都地裁で地位確認係争中)

議員の差別的発言に反論

「正月早々、隣の国が核実験をした。日本の安全をどうやって守ったらいいのかが問われている。○○につける薬はないというが、非常識なリーダーの○○な国がすぐ隣にある。心配でならない。○○につける薬はないものかと思う。私たちは何とかして薬を探し出して対処しなければならない」

1月9日、千葉市で開かれたある労働組合の新年祝賀会で、千葉県内のある市議会議員が来賓祝辞の冒頭で話した言葉だ。この議員は、○○を「まるまる」と表現したのだが、差別用語を連想させ、自治体議員の言葉として明らかに不適切だ。

この労組は憲法擁護を掲げ、平和運動にも熱心だ。この議員は元組合員だという。会場には戦争法案に強く反対した小西洋之参議院議員(千葉選挙区)や連合千葉の事務局長も来ていた。

すぐ後に登壇した私は、看過できないので「お祝いの席で申し訳ないが、今の議員の方の発言に反論したい」と参加者の許しを得て、次のような見解を明らかにした。

朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮、「北朝鮮」という呼称は誤り)政府は6日、声明を発表し、同日午前10時、初の水素爆弾実験が成功裏に行われたと伝えた。水爆かどうかは分からない。朝鮮の声明は〈敵対勢力による核威嚇と恐喝から国の自主権と民族の生存権を守り、朝鮮半島の平和と地域の安定を担保するための自衛的措置〉〈侵略的な敵対勢力が朝鮮の自主権を侵害しない限り、すでに明らかにしてきた通り、先に核兵器を使用せず、どのような場合にも関連手段と技術を移転することはない〉〈米国の対朝鮮敵視政策が根絶されない限り、朝鮮の核開発中断や核放棄は絶対にありえない〉と明らかにした。

私はすべての核兵器の廃絶を求める立場から、朝鮮の核実験にも反対だ。ただし、朝鮮の核保有を日韓、安保理常任理事国(5大国)政府が一方的に非難し、「制裁強化」を叫んでいることにも同意できない。

米国は朝鮮戦争で負け、1953年7月27日に停戦協定を結びながら、「3カ月以内に結ぶ」と約束した米朝平和協定を、62年半後の今も履行していない。朝鮮は声明にあるように、米国が朝鮮戦争を終結させ、平和協定を結び、朝鮮半島から米軍を、撤退させれば、核を放棄すると明言している。

日米韓軍事同盟は、世界最強の米軍の核で朝鮮を威嚇してきた。米韓は朝鮮の目の前で実戦さながらの軍事演習を繰り返している。

アフガン、リビア、イラクで米軍の軍事力によって政権が崩壊したのを見てきた朝鮮指導部は、自らの主権を守るために核武装の道を選択した。

国連安全保障理事会は6日、朝鮮の核実験を非難する声明を発表、安保理のすべての参加国(15カ国)は、新たな制裁措置を盛り込んだ新決議案を作成することで一致した。戦争法に関しては激しく対立した日本の政党、マスメディアは、朝鮮非難で一致した。しかし、安保理常任理事5カ国は核保有国で、核不拡散条約(NPT)は成立から45年間たつが、5大国の核独占を維持するだけで空洞化している。米国などはイスラエル・インド・パキスタンの核保有を容認している。

危機を拡大する日米の問題

日本は「米国の傘の下」で戦争法を成立させた。安倍政権は昨年12月、NPTに加盟していないインドとの間で日本の原発輸出を可能にする原子力協定の締結に合意した。なぜ朝鮮の核だけを問題にするのか。

中国外務省報道官は7日、中国の朝鮮への圧力について外国人記者に聞かれ、「朝鮮半島の非核化を目指す六カ国協議の参加各国は、自分の胸に手を当てて、どういう努力をしてきたかを考えてほしい」と答えた。日韓にある米軍の巨大な基地と核兵器をどうなくすかが課題だ。日本は6カ国協議の再開と日朝国交正常化に努力すべきだ。

米軍は10日、核弾頭を搭載できるB52戦略爆撃機をグアムから韓国へ派遣し、低空飛行した。米太平洋軍のハリス司令官は「韓国と日本という同盟国を守り、米本土を防衛する強固な決意を示すものだ」と述べた。また、韓国軍は8日から、南北軍事境界線付近の10カ所で大型拡声器による対朝鮮宣伝放送を再開した。半島の危機を拡大しているのは朝鮮だけではない。

過去の歴史無視する運動は危険

私は昨年11月、ベルリンで開かれた「第2回平和・繁栄の朝鮮半島に関する国際シンポジウム」に参加した。このシンポには15カ国から研究者らが集まり、米政府に朝鮮との平和協定を求める決議を行った。私は「朝鮮の分断の責任をつくった日本の責任」のタイトルで発表した。朝鮮が今も分断されているのは、日本が植民地支配した結果である。日本には朝鮮の統一に向けて努力する責任がある。

私の反論を聞いても、この市議会議員は「日本人を拉致した危険な国だ」と言って、「自分は間違えていない」と断言した。日本が朝鮮人民全体の人権を蹂躙し、徴用・徴兵、軍性奴隷などで拉致・監禁した過去の歴史を直視し、過去の清算をして国交正常化すべきだと言うと、「昔のことは知らない」と言い放った。

共産党の志位和夫委員長は、8日夜放映のBSフジ番組で「世界と地域の平和と安定に対する重大な逆行で暴挙」だと述べ、朝鮮のことを「北」と度々呼んだ。衆参で朝鮮非難決議が全会一致で採択された。山本太郎参院議員一人が棄権した。

NHKの安達解説委員は8日夕の番組で、「これから(朝鮮を)どうやって締め上げるかが問題だ」と発言した。問題の根源を見ようとせず、他国を一方的に非難するこの国の政府、メディア、多くの民衆こそ危険だ。

過去の歴史を無視し、日韓にある米国の核によって「国の安全」を守ってもらうという異常さに言及しない左翼リベラル「運動」に、問題はないか。作家の辺見庸氏が21日の朝日新聞で指摘したように、中朝の脅威を捏造する「事件」が今起きれば、一億総動員で、排外主義、侵略肯定に走る危険性があると思う。転向を止める思想、構えが求められている。

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