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2013/9/30更新

福島の現実

「東京は安全」と思わない方がいい

福島市 深田和秀

9月22日、飯館を経由して南相馬の海岸線の復興状況を確認する機会を得た。昨年4月、小高区の警戒区域解除に伴い訪問して以来、1年半ぶりである。放射能汚染のため復興の歩みを踏み出せない現状を確かめるべく、忙しい友人に案内を頼んだが、友人も半年ぶりとのことであった。

南相馬市原町区から小高区、浪江の請戸漁港までの行程で、茨城県地方都市議員2名も同行した。議員たちは、初めての訪問だったが、遅々として進まない現地を見て、大きな落胆と被害の大きさを感じたようだ。

警戒区域指定を解除され、すぐに瓦礫整理を手がけた原町区でさえ、瓦礫整理にようやく目処が立った状態で、防災体制すらできていない。防波堤は、土を入れたフレコンバッグ(袋状の包材)を積み上げた応急措置で、再度の地震、津波に耐えるものではない。地元出身の友人は、「かつての新興住宅地や漁業関連施設は、どこに何があったのか? もわからない」と語った。

津波が常磐線の線路近くまで押し寄せた小高区にいたっては、瓦礫の集積さえ進んでいない。除染廃棄物の仮置き場だけは6割程度完成しているようだが、海岸の防波堤は未整備で、仮設焼却施設などが計画されているそうだ。

浪江は、今も緊迫状態だ。6号線を中心にした大小の道は、バリケード・ゲート等で封鎖され、許可証がチェックされる。6号線も、全車通行許可証の提示が求められる。3カ月毎に許可証の申請、更新が必要で、同乗者も別途許可がいる、という厳しさだ。

手続きを済ませ請戸漁港に向かったが、3・11から何も変化していないと感じた。友人よると、慰霊碑を見学にくる方が増えただけだそうだ。見学に来られることは悪いことではないが、政治家こそ実情をつぶさに見ていただきたい。友人も「こんな現状でなぜオリンピックなのか!」と、しきりに首を振っていた。

今回訪問した各地にも普通の営みがあり、多くの人々が未だ生活再建の緒を掴めぬまま不自由な避難生活を強いられている。私たちには、何の救済の道筋も描かれていない。東京オリンピックは、次のステップを思い描くことすら困難な被災者・被害者の傷に塩を塗りこむが如き所業といえる。

猪瀬都知事は、副知事時代に自らのツイッターに次のように書きこんだ―「東京五輪がいやなら、どうぞ引きこもっていてください。復興への使命感がある人、世界のアスリートから生きる意味を学びたい人、日本の選手の活躍を眼の前で見つめたい人、やりたい人でやりますから…」。世界のアスリートから生きる意味を学ばなくとも、身近に原発震災という未曾有の事態から復興しようとする生き様を学ぶことができる。名もなき人の小さな努力の積み重ねを見つめたほうが、企業の利益を背負った日本選手の活躍を見るより、よほど学ぶことが多い。猪瀬知事が「復興への使命感」をお持ちなら、原発震災の現場に来て発言すべきだ。

福島は、東京から250q離れた「汚染の地」だが、東京が安全とは思わないほうがよい。猪瀬知事は、原発震災を甘く見て、東京が汚染されていると認識できないために、「復興への使命感」などという、取ってつけたような概念を振り回しているのだ。

私は福島市在住だが、今回津波被害と同時に発生した原発事故による多重災害の2年半を経過した現状から、最優先課題とは何か?を見極めて欲しいと切に感じた。

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