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2013/8/9更新

参院選意見特集

不公正な社会へのオルタナティブを日々の対話と直接行動で示し続ける 若者で考える未来ネットワーク 松岡千紘

 未来の友の声に耳を澄ますネットワークを AMネット 松平尚也

不公正な社会へのオルタナティブを日々の対話と直接行動で示し続ける

若者で考える未来ネットワーク 松岡 千紘

今回の選挙結果について、周囲の若者からは危機感が感じられるとは言い難く、むしろ無批判が蔓延しているようにも感じる。

その原因を考えるにあたって、大学入学前に働いていた職場のルールが記憶に蘇ってきた。当時私は、非正規労働者として某施設の館内ツアー担当をしていた。笑い話のようだが、ある日私服で通勤中にコンビニでちくわを購入する姿を上司に見られ、注意をうけた。「職業イメージを崩す」というのだ。服装や髪形にとどまらず、プライベートにまで制約を受け、抗議した私はいじめをうけた。

だがこれは珍しいことではなく、他の職場でも、私服の下に見えない形で制服を来て通勤したことがばれて、注意をうけた、というようなことも見聞きした。職場に限らず、学校の校則など、無意味・理不尽なルールを強制され続けることにより抑圧状態への麻痺が生じ、精神的に無批判な態度を作り出してきた延長線上に、軍事国家化という危機的状況が生まれているのだと思う。言い換えるならば、日本は戦後企業支配国家と化した時点で、精神的な隷従状態の常態化という面において軍隊化の準備は整っていたのではないか。

小泉政権の構造改革以降、雇用形態の変化は職場等のしがらみから一定程度自由な「ノマド的個人」を生み出したとも言われる。確かに、終身雇用や年功序列賃金が喪失したという意味では、企業への忠誠心は減退するかもしれない。

しかし実際は、非正規雇用であっても無意味なルールの押しつけなどによる「精神の規律訓練」は日常的に行われ、従順な「人材」としての有効価値の向上を求められ続けている。また、構造的な自由意思の拘束に加え、社会的な相互監視による規律の内面化という状態は、個人への縛りを続けている。「人生のレールを踏み外すことが怖い」という大学の友人の言葉からも、椅子取りゲームのルールがレールとして個人を縛っていることがうかがえる。

しかしながら、規律訓練の圧力が大きくなれば、その反動も大きくなる。実際、私の当時の職場では、「造反組」として私の抗議に賛同し、力を貸してくれる仲間が出てきた。また、今月東京で行われた「学費・奨学金は問題だらけ〜デモ」に参加した際、理不尽な制度に怒る若い仲間のエネルギーが爆発しているのを感じた。

問題意識を喚起する仲間の存在こそ力

問題は、当たり前に思われる画一化された既成の「人生のレール」を、権力から一方的に決められた理不尽な「経済と制度のルール」へと読み替えることの難しさである。日常生活に暗に組み込まれた抑圧、そして忍耐に慣れてしまっている状態から、一人で問題を制度の欠陥として受け止めることは容易ではない。そこで力になるのは、問題意識を喚起する仲間の存在である。

例えば、今回の選挙結果から、今後予想される多くの困難を日常の中の対話に挿入していく作業が有効ではないだろうか。かつてこの機能は労組など中間団体が担っていたが、組織率の低下から難しくなっている。利用率の高まったSNSのつながりも手段の一つかもしれないが、これらは便利な反面、オーディエンスを前にプライドを刺激され、純粋な討議ではなく、勝ち負けの議論に終始する傾向がある。また、思想的に近しい者の寄合になる傾向があり、民主主義の手法としては「日常的な対面と対話が重要」と確信している。

今回の選挙で社民党応援演説に弁士として参加していた高槻市議の川口洋一氏が、登壇後街宣車から降り、前列で聞いていた女性2人組と同じように地面に座り、同じ目線でフランクに話しかけていた。彼女らは決して社民応援団などではなく、街宣の直前に現地で行われていた路上ライブの観客だった。彼の声掛けに最初は戸惑っていたように見えた彼女らだったが、無碍にすることなく徐々に打ち解けて会話が弾んでいた。彼の行動を特別視するのではなく、理不尽で不公正な社会制度に気付いた一人ひとりが行動に移していかなくてはならないと、その光景に勇気をもらった。

選挙は政治参加の一つの重要な手段だが、同時に他の多くの民主主義に必要な手段の一つでしかない。確かに我々の生活を直接左右する選挙結果だが、その結果に「やるべきこと」「できること」が左右される訳ではないはずだ。

今回の参院選結果では、いよいよ改憲が現実的なものとなってきた。集団的自衛権を発動可能とする9条改正・生活保護法改正・TPP・消費増税と、目下に迫る課題は私たちの生活へ直接影響を及ぼすものばかりだ。このまま改憲が進み、国防軍の保持が認められれば、軍隊として戦地へ赴くのはまず若者であるし、志願制度であっても、就職難ゆえに軍隊が就職先となることが考えられる。それこそ志願制と若者の貧困は深刻なシンクロをもたらし、安倍政権が続けば志願と戦死すら自己責任で肯定されかねない。

アメリカナイズはますます進行していき、まずその影響を受けるのは、若者である。我々は日々の対話を通じて、選挙結果から導かれる不公正な社会のオルタナティブを提示し続けるべきだ。さまざまな直接行動で、粘り強く生き抜くことをやめてはいけない。

参院選直後にTPP交渉初参加
未来の友の声に耳を澄ますネットワークを

AMネット 松平 尚也

参院選が終わった2日後の23日、日本がついにTPP交渉会合に初参加した。

TPP交渉は、後から加入した国は、これまで決定した内容には一切口出しできないどころか、交渉参加するために前払いが必要なえげつない会合だ。交渉は米国主導で進んでおり、日本は参加を認めてもらうために米国に対し前払いを支払っているが、その内容は市民に知らされてこなかった。

しかし、今回の会合後・選挙終了後にその一部が漏れ始めた。「アフラック」という米国最大手の保険会社と日本郵政の提携話がそれだ。アフラックは、日本のガン保険の7割のシェアを誇るが、日本郵政がガン保険に参入することに対して、「シェアが奪われる」と警戒し、反対してきた。全国に支店を持つ日本郵政は、地方での保険商品に対して地の利があるからだ。

しかし今回の提携話は、外資アフラック1社のみが郵便局と提携し、その窓口で商品を販売できることになった。国内生命保険会社も郵政と保険商品の販売を模索していたにもかかわらず、だ。今後もアフラックに限らず、外国資本が市民の暮らしに深く進出し影響を及ぼすようになるだろう。

TPPによる暮らしへの影響は、選挙前からソーシャルメディア等で盛んに報じられたが、争点にはならなかった。背景には、これまでの左派や労働運動の根本的な運動の限界も影響した、と感じている。換言すれば、我々は間接民主主義のみならず直接民主主義の手法においても、広く市民社会の運動を構築するに至っていない、ということだ。

政治の根本に影響を与えるような新しい運動が必要になっている。古いネットワークも活用しつつ、TPPなどのシングルイシューを入り口に、政治に影響を及ぼす活動の展開が、いま求められているのではないだろうか。

そのためには、活動の敷居を下げる歓待的なネットワークの構築が必要となっている。未来の友の声に耳を澄ますためには、己の耳に、友の声を携えなければならない。そのためには、どういった情報をどう広く市民社会に届けつながりを作っていくのか考えることが大切になってくるだろう。

次の選挙までTPPによって市民社会に起こる影響をどう未来の友と共に考えることができるのか、われわれの力量が問われている。

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