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2013/6/25更新

1%の国民による1%の国民のための1%の国民の政府

ギリシャからレバノンまで、労働者階級よ、立ち上がれ!

 

3月6日アル・アフバール英語版
ハッサン・ディベ(レバノン・アメリカン大学経済学部長)

近代国家の行政はブルジョアジーの業務を管理する一つの委員会にすぎない。−カール・マルクス

引用はマルクスの1948年『共産党宣言』の一文であるが、近年の社会運動の想像力の中で大きくクローズアップされたことはない。20世紀初頭以降、労働者を代表する政党が政治舞台への参入を許す政治システム、とりわけ福祉国家建設などで、若干の民主主義が成立。政府は累進税で資本家階級の利益の一部を吸い上げ、医療、教育、交通などに関する「社会的地代(social rent)」として再分配した。

また、賃金に関する法制化や、インフレや生産性に応じて賃金水準を是正できる団体交渉権の法的保証などで、再分配を実現させた。このため、先進資本主義諸国では、労働者の賃金がGDPに占める比率が3分の2にまで上昇した。労働者は政治権力機構のパートナー、大量生産経済のパートナーとなった。

ブルジョアジーはこの新パートナーシップを認め、その政治経済的お膳立ての背後に潜んだ。丁度、資本主義の誕生期に経済的弱者階級の背後に政治的に潜んだように。当時世界は、労働者階級が政治と経済の分野を支配するとされる社会主義陣営と、労働者階級が政治と経済の一部を共有する資本主義陣営に二分されていた。

この政治的・経済的編成が、1970年代初期から1990年代初期の間に崩壊したのである。70年代に資本主義世界を襲った経済危機の結果、上記の労使蜜月のケインズ主義政策が次第に放棄されていった。

第三世界では、この変化は1973年のピノチェットのクーデターとともに始まり、80年代英国のサッチャー首相、米国のレーガン大統領登場で深化し、1990年代初期に社会主義的実験の崩壊まで続いた。

資本は体勢を立て直して、経済政策では労働者階級攻撃に撃って出、金融資本、自由化、民営化が社会の趨勢となった。労働者階級の既存成果の多くは、水泡に帰した。この変化の急激さと巨大さに驚いたジョセフ・スティグリッツ(元世界銀行上級エコノミストでノーベル経済学賞受賞者)は、リンカーンの有名な言葉をもじって、「1%の国民による1%の国民のための1%の国民の政府」と言った。

2011年、世界は1848年の世界に戻った。政府は、経済を支配し、富と所得のほとんどを独占する少数者の代表となった。スティグリッツが「階級戦争」と呼んだものが、米国、ギリシャ、ラテンアメリカ、スペイン、そして最近ではレバノンに戻ってきた。

2011年の昇給要求闘争から現在の給料体系をめぐる対立にいたるまで、レバノン政府は、労働者、従業員、中産階級、時には産業資本を犠牲にしてでも、少数富者を擁護しているようである。2012年、政府はこれまでの昇給分をめちゃくちゃに壊し、1996年以降続いているインフレの累積に比較して、働く人の所得は大幅減となった。特に中産階級の所得減が大きい。現在、政府は公務員や教員の人数減と給料体系の切り下げをはかっている。経済界や銀行業界のボスの圧力に屈したのだ、レバノンの実際の支配者は財界であって、憲法機構から生じた政府ではない。

ブルジョアジーが経済を支配し危機のツケを労働者に押し付ける

これに対し、ユニオン調査委員会(UCC)が、レバノン国民の賃金権利擁護を訴え、現在GDPの25%までに低下している賃金水準(再貧国の水準)の上昇を要求している。1996年以降実際生産高が50%増、実際生産性が75%も増加しているのに、対GDP賃金比は1997年で35%も減少した。つまり利潤、地代、利子などが上昇し、GDPの75%になった。1997年から2012年の間に、約300億jが賃金から資本収益へ移転した。

政府の経済政策は、生産増や生産性上昇を、1975年のレバノン内戦前に対GDP比55%であった賃金を改善するために利用しなかった。もし改善していたら、レバノン国民の生活水準や雇用市場の改善も見られ、今のように優秀な労働者を外国へ逃がすことを防げたであろう。

しかし、「財政安定」や「インフレ」を口実に、1997年から2008年に賃金凍結が強行された。法律では、「国民の賃金水準調整のために物価指数委員会を毎年開かねばならない」と規定されているにもかかわらず、政府は無視したのである。こんなことは、12年間なかったことである。

この政策は、銀行や高額所得者による高利率の短期国債購入を促進した。一方、逆累性税制のために、底辺世帯は大打撃を受けた。納税者から債権者への富の移転が激しくなり、利子の対GDP比率が5%から10%に上昇。さらにこの政策は、経済を刺激するために外国資本の流入と海外で働くレバノン人の送金にますます依存するようになり、その結果、貿易財と非貿易財の価格格差が拡大した。サービス業や小売業など、給料が安くて生産性が低い部門に人やモノの経済資源が集中するようになった。

また、この政策のために、2007年以降不動産バブルが生じた。2006年、建設部門の対GDP比が8・5%だったのが、2013年には13・5%になった。その期間GDPが20%増加したが、ほとんどが建設部門の成長の結果である。その特徴は、低雇用と労働者一人あたり高い付加価値だ。付加価値の大部分は、不動産業者と金融資本の手中に入った。

レバノンの状況は、ギリシャの状況と似ている。しかし、それは金利生活者経済説を唱える学者が言うような意味で似ているのではない。両国ではブルジョアジーが経済のヘゲモニーを支配し、自分たちの政策が創り出す危機のツケを賃金労働者に押しつけるという点で似ているのだ。

公共部門の労働者は、この政策に抗議して街頭デモを繰り広げている。この政策は、ケインズが批判した第一次世界大戦後のデフレ政策を思い起こさせる。ケインズは、「デフレ政策(物価の切り下げ)によっても賃金減に苦しむ労働者階級の助けにならないし、他の階級の利益にもならない」と批判した。また、「生活苦に苦しむ人々は最後まで抵抗し、経済的弱者を力でねじ伏せるまで続く戦争となるであろう」と言った。当時ケインズは、力によってねじ伏せる戦争を、「ダメだ」と否定した。

レバノン人民は、1%に反対して労働者や給与所得者や年金生活者を守るUCCの呼びかけに呼応すべきだ。1848年と同じ闘いである。米国、ギリシャ、レバノン、その他の国々でも同じである。

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