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2013/5/2更新

福島現地インタビュー

1_Sv以上の地域は 全員を補償対象に

子ども福島ネット 佐藤 幸子

震災・原発事故から2年を過ぎ、福島県は「県民全員帰還」の方針を打ち出した。除染すれば復興は可能という夢が語られる。しかし除染は、やればやるほど難しさが実証されている。福島県経済は停滞のままだが、除染関連と復興イベントだけが活況を呈しているという。助成金を取りやすいからだ。

一方で放射線による健康被害が現れ始めている。汚染の実態を隠して「復興・帰還」を呼びかける県当局。子ども福島・代表の佐藤幸子さんに、福島の現状を聞いた。 (文責・編集部)

× × ×

「子ども福島ネット」は、子どもの健康と避難を最優先に活動してきました。ところが県は、「2020年までに全員帰還」という方針を打ち出し、昨年12月に、新規避難者への家賃補助打ち切りを表明しました。しかし、県災害対策本部に「除染が進んでいないのになぜ打ち切るのか!」「将来の避難の道を閉ざすのか!」等の怒りの電話が殺到。批判が続出して、佐藤知事は方針見直しを表明しました。今後も、避難の権利を求めて取り組みは続けます。

除染が進まず、効果もないので、県外避難者は増え続けています。しかし一方で、「子どもが避難先で馴染めない」「知人がいない」などのストレスから帰還せざるを得ない人もいます。

避難者受入自治体側には、借り上げ住宅や家電などの援助制度がありますが、福島県は、県外避難者に対して支援しないばかりか、帰還者には借り上げ住宅を助成するなど、あからさまな帰還誘導です。

 被災者支援法の実体化急げ

福島県が子どもたちの甲状腺調査をして、3分の1の子どもに嚢胞などの異常が見つかりました。子ども福島ネットは、他の9団体と共同で、県知事と県立医大に検査体制の強化を求める要望書を出しました。

現状では、人員が少ないために全員の検査が終わるのが2年後になります。A2判定の子どもの再検査が2年後とされたのは、このためです。子どもたちの体力が落ちている、という声も増えています。検査体制の強化など健康管理体制の確立は、焦眉の課題です。

子ども被災者支援法が昨年6月に成立しました。この法律は、「避難の権利」の実現に向けた大きな一歩です。一定の線量以上の放射線被ばくが予想される「支援対象地域」からの避難や、同地域における居住、帰還について、被災者が自らの意思によって行うことができるよう、国が責任をもって支援しなければならない、と定めているからです。

しかし、同法は未だ理念法で、実体化が課題となっています。具体的な支援の中身をつくり、予算も獲得しなければなりません。私たちは「市民会議」を結成し(昨年7月)、毎月1回、院内集会を続けています。

 自力で除染マップ作り

除染については、福島市内で最も汚染された渡利地区は一部終了し、隣の小倉寺地区をやっています。政府が除染作業を加速しているので、除染作業員用の宿舎として営業を中止した旅館やアパートが借り上げられ、仮設住宅も建設されています。作業員が現場に通う車が増え、朝の渋滞が起こるほどです。

これは、原発事故被害者が、除染や原子炉修復作業という被曝労働に就かねばならない、という辛い現実でもあります。除染して故郷に安全に帰れるならまだしも、除染を請け負った会社自身が、除染効果を疑問視している有様です。剥ぎ取った土の代わりの土が足らず、仮置き場も確保できず、進んでいません。

私が住む川俣町でも除染が始まり、同意書への署名を求められ、除染しても無駄だと思っているので断りましたが、受け入れてもらえませんでした。

そもそも県は、除染の効果を確かめるための測定すらさぼっているため、子ども福島ネットは、除染マップ作りに取り組んでいます。1秒ごとに線量を測定・表示できるホットスポットファインダーを、70万円で購入しました。県は高額で、実態より低く出るモニタリングポストを設置しましたが、この測定器なら、安く簡単に実態が把握できます。県は、実態を隠したいのだ、としか思えません。

住民の分断を助長し利用する東電

事故被害者である福島県民の分断が、深刻化しています。強制避難区域の住民には、当然のことながら補償が出ているのですが、他の福島県民から「補償が出て、いいわね」とやっかみを言われることがあるそうです。そもそも、補償金が出ればいいということではなくて、事故前の生活を取り戻すことが、原則でありスタートラインのはずです。

避難区域の人たちは、元の家に帰ることは当分不可能でしょうし、それに見合う補償額には到底及んでいません。私の職場でも2人、避難区域からの人が働いているのですが、避難したいけど事情があってできない人たちから、ちょっとした拍子にやっかみめいた言葉が出ることがあり、人間関係がギクシャクすることがあります。

東電は補償・賠償に関する相談窓口を設置していますが、東電が指定する書式で証明書類が必要です。小規模な自営業の方などには、前年度の経理書類などを持っていない人も多いので、請求できない人もたくさんいます。加害者が補償のルールを作り、被害者の側に立証責任を負わす、という逆転した方式です。これが、住民間の分断を助長している一因でもあります。

そもそも、「自主避難」という放置政策によって、避難したい人ができないこと自体が、根本問題なのです。だから、1_Sv/年以上の地域は、全員補償の対象で、避難の権利も認めさせるための取り組みを開始しています。

避難するかしないかはそれぞれの選択ですが、避難する権利はすべての被害者に保障されるべきです。

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