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2013/2/20更新

生活保護受給当事者として

国家は弱者を守らない

大阪市T・W(40才)

私は、いま生活保護を受給している。精神的に病んでしまい、働けなくなったためだ。一般的な就労者から生活保護受給者へと変わるのは、あっという間のでき事だった。米系多国籍企業で人事担当としてキャリアを積んでいたが、うつ病を発症。療養後、人事管理のキャリアを活かして派遣労働を続けたが、派遣先部門の廃止や病気の再発などで、生活保護と派遣労働を行き来する生活が続いている。

職歴・病歴・年齢を考えると、私が安定した正規職を得るのは絶望的だ。日本には、生活保護以外のセーフティネットがない、と改めて痛感した。生活保護を受給していると、マスコミの「生活保護バッシング」は、本当に腹立たしい。生活保護受給者で「就労可能」とされているのは2割弱しかいないことを、彼らは知らないのだろうか? 生活保護受給者は世帯で数えられるが、2011年12月時点での厚生労働省の資料をみると(インターネットで閲覧できる)、高齢者世帯が42・5%、母子家庭世帯7・7%、障がい者世帯11・4%、傷病者世帯21・3%、その他が17・1%であり、就労可能とされる人は17%しかいないのだ。私はそのうちの「傷病者世帯」に当てはまっている。働きたくても働けないのだ。

バリアのない街

報告 生活保護院内集会

就学支援うける女子中学生の訴えに涙

遙矢当

2月1日。衆議院第一議員会館の1階多目的ホールは、200人を超えるという参加者であふれ返りました。私が集会開始の12時より早めに会場入りすると、関係者の方から「何人集まるものか…」と心配する声が出ていましたが、立見が出るほどで、関心の高さを示していました。

基調講演を行った吉永純氏(花園大学)は、「今回の保護基準引き下げは、貧困大国の日本を放置したままの『強大な弱者いじめ』である」という危機感を表明し、子育て親世代の貧困が、就学援助の受給者数の増加につながっており、貧困の世代間連鎖が強化される懸念も述べられました。

続く、山野良一(千葉明徳短期大学)、田川英信(元ケースワーカー)両氏も、子どもとその親世代の貧困、特に就学援助についての現状とその課題について問題提起しました。特に田川氏は、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」の文中にある「健康」の一語に着目しながら、中学生の就学支援において、子どもの部活動への参加が費用面から制限されてしまう現状は、「就学支援がとても十分とは言えない」と強調していました。

福島みずほ氏(社民党)、山井和則氏(民主党)など参加した国会議員による発言を挟みながら、生活保護を受給する当事者5名による発言が続きました。いずれの発言も、生活保護の引き下げは「現時点でも苦しい生活をさらに悪化させる」として、引き下げに反対するアピールで結んでいました。特に最後に登壇した就学支援を受けている女子中学生の発言は、本人以外の中学生の生活の厳しい現状を語り、参加した人々の涙を誘いました。彼女と同じ苦しみを味わっている中学生が多数いることの悲惨さが、集会に参加した人々の胸を締め付けるようでした。

生活保護については、芸能人の母親が受給していたことがことさら非難され、片山さつき(自民党)氏が国会でこれを取り上げ、橋下大阪市長が職員親族の調査を公言するなど、一層注目を集めています。私自身も、介護現場で生活保護の話題が出ない日が珍しい日々を送っています。生活保護受給者の厳しい現状と制度への不満もまた、限界に来ています。私はこのうねりがより大きなものになり、真のセーフティネットの構築へ一日も早く結びつくことを願って止みません。

今回、政府が生活保護費削減の根拠として利用したのは、生活保護を受けていない生活困窮者だった。比較すると生活保護受給者よりも低収入だから、生活保護の「生活扶助」を減らす、という無茶苦茶な「制度改悪」である。

そもそも日本の生活保護制度は、「捕捉率」の低さこそ問題にされるべきだ。本来ならば、生活困窮者が生活保護を利用して最低限の生活ができるようにするのが行政の役割にもかかわらず、何ら具体的な手段を講じてはいない。2011年の調査では、所得が生活保護費以下となるケースのうち、実際に生活保護を受給している割合を示す「捕捉率」は、ドイツでは64・6%、イギリスでは47〜90%、フランスでは91・6%であるのに対し、日本は15・3〜18%に過ぎない。

日本に次いで補足率の低いドイツ並みに補足率を引き上げるだけでも、日本の生活保護利用者数は717万人、受給者は3倍程度になる。日本は、「生活保護利用者が多すぎる」のではなく、「生活保護を利用できない人が多すぎる」というのが実態である。

教育扶助を削減する卑情

生活保護を受給しながら生活をしていると、やはり保護費は「少ない」と感じることが多い。憲法第25条1項において「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定められているが、現状ではとても健康で文化的な生活などできない。家賃、水光熱費、食費で毎月の生活保護費はすぐに消えてしまう。私の場合、精神疾患をわずらっているため、健康的ではないし、サラリーマン時代に楽しんでいた趣味の活動は行えないので、とても文化的な生活ともいえない。毎日、残りの保護費を考えながらの生活なので、精神疾患が悪化しそうになる。

その他の制約も多々ある。あまり知られてはいないが、自治体によって生活保護に関わる運用が異なるということには、非常に驚いた。担当のケースワーカーのさじ加減ひとつで、生活保護受給者の日常生活は大きく変化してしまうことも多い。

私のような単身者で傷病者世帯の生活保護受給者には影響は少ないようだが、今回の「制度改悪」で最も影響を受けるのが母子世帯だという。生活保護費のうちの教育扶助が削減されてしまうため、子どもたちの進学に影響を与えかねないのだ。子どもたちの進学が阻害され、結果として良い条件の職場で働くことができなくなり、ここから「貧困の連鎖」が生まれてしまう。子どもたちはこの日本の将来を背負っていく存在だ。子どもたちにこそ手厚い福祉的支援が必要ではないか。

先般行われた生活保護衆議院内集会を見てつくづくと感じたのは、「国家は弱者を守らない」という原則的な考えだった。例えば、「すべての国家は暴力の上に基礎づけられている」(L・トロツキー)や、「国家とは、ある一定の領域の内部で、この領域という点が特徴なのだが、正当な物理的暴力行使の独占を(実効的に)要求する人間共同体である」(M・ヴェーバー)などの考察に表現されているような、極めて暴力的な国家像だ。

社会保障改革は前の民主党政権から議論されていたが、自民党の片山さつき(元財務官僚)や世耕弘成が財務省へかなりの圧力をかけていたという。基準部会や特別部会で話し合いが行われていたといっても、議員と財務官僚の力を利用した「削減ありき」の議論だったと考えざるを得ない。生活保護費が削減されると、連動して日本全国の各都道府県の最低賃金も下げることが可能になる。政財官界一体となった、貧乏人への攻撃だ。

今回の「制度改悪」は、圧倒的な強者による弱者への暴力だ。貧困者が「健康で文化的」な生活を送れるような制度づくりが本来のあり方だ。

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