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2013/2/20更新

安倍政権の貧乏人イジメ

1月29日、安倍政権は、2013年度予算案で生活扶助基準を3年間で総額670億円削減することを決めた。削減幅は平均6.5%(最大10%)で、受給額が減る世帯は母子家庭中心に96%に上る。併せて同政権は、就労支援の強化、医療費扶助の適正化など「生活保護制度の見直し」によって450億円を削減するとしている。

「2%インフレターゲット」政策で、20兆円規模の緊急経済対策を打ち出し、公共事業の「バラマキ」を行ってまで物価上昇させながら、一方で、生活保護費を下げ、消費税増税でより高い負担増を求めるという安倍政権。働いても生活保護以下という労働環境をそのままにしての保護額の切り下げは、国家による貧乏人イジメであり攻撃だ。(編集部)

間違いだらけの「生活保護」基準引き下げ/負のスパイラルの引き金

生保基準最低賃金引き上げ,貧困なくす対策を

突然持ち出された「デフレ論」

基準引き下げの主な理由として安倍政権は、@下位10%の低所得階層の消費実態が、生活保護基準より低い、Aデフレで物価が下がっている、という2点を掲げている。

@については、まず、制度の利用資格があるにもかかわらず利用していない「漏給層」が大量に存在する現状、すなわち捕捉率の低さこそ解決されなければならない。生活保護捕捉率が低いために、不安定低賃金労働で貧乏生活を余儀なくされている低所得世帯が、生活保護基準以下となるのは、いわば当たり前。最下位層の消費水準との比較を根拠に生活保護基準を引き下げる論理を許せば、生活保護費は際限なく引き下げられることになる。まず、補足率を上げるための実効ある施策こそ必要である。

長年貧困研究に携わってきた専門家である基準部会委員は、研究結果として、あるべき最低生活費は、16〜21万円(現行の生活保護基準〔大都市圏〕=13万8839円)であるとしている。また、基準部会の検証結果によれば、高齢世帯については、逆に下位10%の貧困層の消費水準よりも生活保護基準の方が低く、保護基準額を引き上げなければならないのである。安倍政権は、こうした「不都合な真実」は無視する。

次にA「デフレ論」だが、物価が大きく下落しているのは、家具等(2004年から2012年に22・5%下落)と教養・娯楽(同前14・3%下落)である。なかでも電化製品・パソコン等の耐久消費財の下落幅が大きい。逆に食料(同前2%上昇)、水道光熱費(同前14%上昇)、被服・履物(同前0・2%上昇)などの生活関連費については上昇している。そもそも従来の保護基準決定方式では、物価の要素は排除して決められてきたため、貧困問題に詳しい専門家が13 回にわたって議論した結果をとりまとめた生活保護基準部会の報告書でも、一切言及されなかった。安倍政権が「デフレ論」を突然持ち出したのは、公約に掲げた生活扶助費1割カットを導くためであり、結論ありきの後付け根拠である。

貧乏人全体への攻撃

現行生活保護法が制定された1950年以来、生活保護基準が引き下げられたのは、2003年度(0・9%減)と2004年度(0・2%)の2回だけ。今回は前例のない大幅引き下げとなる。しかし、生活保護基準の引下げは、生活保護利用者だけでなく、フリーターや働くシングルマザーなどワーキングプアの収入減と負担増を招き、市民生活全体に大きな影響を与えることになる。

まず、最低賃金の引き下げを招くだろう。最低賃金は、憲法25条の「健康で文化的な最低限の生活」を保障するという目的に応じて定められているからだ。生活保護基準が下がれば、最低賃金の引き上げ目標額が下がり、地域によっては最低賃金そのものが下がって、最低賃金ギリギリで働いている不安定労働者の賃金低下を招く。

最低賃金が下がると、労働コストの基準が下がるので、あらゆる層で収入が低減することになる。また、生活保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障がい者自立支援法による利用料の減額基準、就学援助の給付対象基準など、福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動している。

非課税世帯が課税され、福祉制度適用者が除外されることも多発する。逆に保護基準を引き上げると、生活保護を受けていない人も各種福祉制度を利用できるようになったり、非課税になったり、最低賃金が上昇したりと、生活の向上になる。暮らし全体を良くしていくためには、生活保護基準の引き上げと制度改善が必要だ。

生活保護問題全国会議の尾藤廣喜弁護士は、「生活保護基準切り下げは、社会保障制度、ナショナルミニマムの切り下げにつながるので、他人事ではない。生活保護バッシングは、自分の首を絞めるようなものだ」と語る。

 生活扶助小国日本

生活保護世帯をはじめとする低所得層は、貯蓄する余裕がなく、収入のほとんどを消費に回す。このため、低所得層の収入減少は、消費の減少に直結する。そうすると、デフレを理由に生活保護基準を引き下げながら、さらなるデフレを招く、という負のスパイラルに陥ることになる。公共事業をバラマキしてでもインフレへと導くとしながら、一方で、デフレを招く保護基準引き下げは経済政策としても一貫性を欠き、愚策というほかない。

テレビなどで、生活保護受給者が増加し、国や地方の財政を圧迫していて、生活保護予算を引き下げないと財政が破綻するかのようなコメントが聞かれる。しかし、日本の生活保護費(社会扶助費)は、3・5兆円、GDPにおける割合は、0・6%。OECD加盟国平均の7分の1で、極端に低い。生活保護費を下げても財政への影響は小さく、そもそも命を守るための支出を財政問題を理由に引き下げるという安易な引き下げ論は、論外だ。

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