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2013/2/3更新

いま アメリカでは

シカゴの新自由主義的教育改革への反撃

翻訳・脇浜義明

橋下大阪市長は、米国の教育改革(教育企業化、民営化)を真似ているのだろう。その本家・米教育改革に対し、シカゴでは地域と教員組合の抵抗が続いている。

「ルネサンス2010」プログラムと「落ちこぼれゼロ」法とともに始まった公立学校つぶし、教員解雇・強制配転、学校民営化、チャータースクール(公募型研究開発校)化に対し、住民や教員が抵抗したが、大労組シカゴ教員組合指導部は闘わなかった。

しかし、教組内部の下からの突き上げで指導部が交代、新指導部のもとで地域住民・生徒・労組・社会運動と連帯して「教育改革」への反対運動が始まった。9月には、シカゴ教員組合としては25年ぶりのストが敢行された。(訳者)

「市長は学校閉鎖をやめろ!」 と抗議の座り込み

サマンサ・ウィンスロー (2012年11月6日付「レイバー・ノーツ」)

11月2日朝、ラーム・エマヌエル市長(民主党、前オバマ大統領主席補佐官)事務所の前で、学校閉鎖に反対する教員と親100人がデモ・座り込みをおこなった。彼らは市長との会見を求め、抗議と要求のアピールを午後遅くまで続けた。役所が閉まる5時をすぎても座り込みは続き、午後10時、退去拒否で10人が逮捕された。

シカゴ教員組合(CTU)が9月に7日間の抗議ストを行ったのが、公教育擁護闘争の大きな一歩だった。逮捕された小学校教員カリーン・ビヴァリー=バスは、「市は学校の運営が仕事で、閉鎖するのは言語道断。これは公民権侵害だ」と語った。このデモ・座り込みを組織したのは、「社会正義を求め、行動する教員の会」と、オーバニー公園地区委員会やケンウッド=オークランド地区団体などの地域グループ。「ストが教育を改善する闘いと保護者から評価され、それが励みになった」と、ビヴァリー=バスは言う。

抗議の座り込みは、12月1日に「100校の閉鎖」が噂されている2回目の閉鎖校発表に合わせて行われた。新たにシカゴ公立学校(CPS)CEOに任命されたバーバラ・バード=ベネットは、「発表の5カ月延期」を発表。CTU組織部長ノライン・グートカンストは、その延期理由について「親や教員に反対運動を組織する時間を与えず、抜き打ち的に閉鎖校を発表することだ」と、説明している。

CPSは、2008〜10年に53校を閉鎖・統廃合し、その過程で1万5000人の生徒を強制転校させた。地域が組織的に抵抗した2校は、難を免れた。教員組合は、@閉鎖を1年間保留すること、Aシカゴ学区と地域住民団体で問題を再協議すること、を要求している。

学校閉鎖は貧困や社会福祉の問題でもある

教育委員会は、今後5年間に新チャータースクール(公募型研究開発校)60校の開校契約を結び、公立学校を民営チャータースクールに置き換える作業を続けている。公立学校(幼稚園から高等学校)の運営権を持つ学区は、「閉鎖の基準は成績不良ではな い。入学者数が減少しているし、財政節約のためだ」と説明する。

しかし、NGOピュー・チャリタブル・トラストの研究部=「フィラデルフィア研究イニシアチブ」は、都市部6学区の学校閉鎖を調査し、そこで節約できる財政は、少なくとも短期的には、微少であることを明らかにした。その上、生徒や備品類を移動する費用や空校舎の維持費もかかる。

教員や地域団体は、「学校閉鎖は、校舎を空にして、民営チャータースクールを入れるためだ」と言っている。教育雑誌『キャタリスト』の調査によれば、シカゴの閉鎖校の80%には、チャータースクールやマグネット・スクールやシカゴ全域から入学者を選抜できる選択入学式学校などの新学校が入っている。

CTUのグートカンストは、「組合の労働協約闘争や長期的な学校閉鎖反対闘争で、親や地域と強い絆ができた」と語る。

学校閉鎖に関して、教員組合には直接当局と交渉する権限はないが、閉鎖に伴う強制配転に関しては交渉権があり、それを通じて閉鎖に抵抗できる。学校閉鎖になれば、教員が学区から閉め出され、教育職からも閉め出される場合があるからだ。

労働協約闘争に関しても、CTUは、公教育擁護闘争の一環、学校資源向上・充実闘争の一環と位置づけている。過去2年間、教員たちは、地域─労組連合体と並んで企業減税反対闘争や学校から固定資産税を取って他へ回す政策に反対する闘いに従事してきた。「これまでと異なった形 で親たちと結合できるようになった」と、グートカンスト。

ルーズベルト高等学校1年生のジャミー・アダムズ(14歳)は、「シカゴ教育青年の声」(VOYCE)を代表して、座り込みで演説した。VOYCEも学校閉鎖に反対、さらにドロップアウトを作り出し、「学校から刑務所へ」のパイプラインとなる非人間的学則の改善運動も行っている。アダムズは、ストで先生たちと一緒にピケをはった少女である。「学校閉鎖があるたびに、生徒たちは何度も学校を変わらなければならなかった」と彼女は語る。

ウエストサイドの特殊学校9年生担当のリリアン・カスは、「教育民営化と闘うために、こうした座り込みや、市民的不服従闘争が必要だ」と語った。彼女は、学校閉鎖が地区の荒廃に繋がることを強く指摘した。「私の生徒たちは、学校のおかげで安定しています。一人の先生の存在が彼らの精神生活を支えているのに、先生がいなくなったら、彼らはひどく傷つき、荒れた生活に戻ってしまいます」。

12日の退役軍人の日にはシカゴ中心街で集会があり、CTUは組合動員をかけている。学校閉鎖に反対する市民連合の「学校を支える会」も参加する。

この抗議運動のエネルギーにビヴァリー=バスは感動し、「学校閉鎖は大きな市民全体の問題となっていると実感する」と語った。「教員が雇用を守ろうとしている問題ではない。これは教育問題であり、貧困問題であり、精神衛生問題であり、社会福祉問題なのだ」。

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