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2012/12/14更新

被ばく労働を考えるネットワーク」設立集会

「差別の上に成り立つ」原発現場労働者とどうつながるか?

報告=内永徳(日雇い労働者)

11月9日、東京都江東区の亀戸文化センターで「被ばく労働を考えるネットワーク」の設立集会が行われました。このネットワークは、被ばく労働問題に取り組む労組のメンバー、弁護士、医師などの呼びかけによって結成されたもので、会場は立ち見も出る300名の参加者で溢れ、マスコミ各社も取材に訪れるなど、被ばく労働問題についての関心の高さを感じさせるものでした。

集会は、呼びかけ人のひとりである写真家・樋口健二さんの発言から始まりました。樋口さんは「40年間、原発の問題に取り組んできた。下請け制度や労働者を差別し、賃金のピンはね問題は、当初からずっとあった。原発は差別の上に成り立っている。表現者としての力しかないが、こ れを大きな社会問題にしていきたい」と語った。

続いて、かつて原発で配管工として働き、全日本運輸一般労組原子力発電所分会という原発下請労働者の労組をつくった斉藤征二さんが発言。「原発に携わる人がいなければ、原発は成り立たない。政府・東電の人海戦術を行うための人材を集めるという政策は、戦争当時の赤紙を思い出す」と発言された。

各地の取り組みの報告では、全国一般いわき自由労組の桂書記長が発言。

「今日も団体交渉をしてきました。決裂寸前です」と、除染特別地域内で働く除染労働者の危険手当未払い問題の報告を行い、「一次下請業者について、『危険手当がつくのだから、賃金は最低賃金でかまわない』と言っている。除染労働者は最賃でいいのか。被曝覚悟で作業している労働者をばかにする姿勢だ」と、怒りをこめて発言しました。

神奈川県労災職業病センターの川本さんは、これまで関わってきた3名の原発労働者の労災申請 の経験のなかから、「労働者がどうやったら起ち上がれるのか。その条件をつくるのがこのネットワークの役目である」との問題提起を行なった。

会場からの「脱原発という姿勢と『仕事がなくなる』という理由で廃炉を望まない労働者とどうつながるのか」という質問に対し、「原発に反対する人だけを対象にするのではない。これまでもサラ金やギャンブル業界で働く労働者の相談にも乗ってきた。彼らに対して、『反社会的な仕事だから辞めなさい』などと言うでしょうか。権利を権利として行使させることが課 題」と発言された。

フリーター全般労組からは、原発の保守管理の大手企業「アトックス」の下請「サンシード」における解雇事案の報告があった。サンシードは、アトックスとの契約終了を理由に、今年10月には福島第一原発で働く30名の労働者をいっせいに解雇し、住居からも追い出した。請負業務であるはずなのに、労働者はアトックスから直接指示を受けていた。にもかかわらずアトックスは、「雇用関係を結んでいないので、団交には応じられない」としているという。

除染作業での危険手当未払い問題の当該からは、「1日1万円の危険手当が出ることを知って、はじめて『そんな危険な作業をしていたのか』と思った。除染作業の現場で出会った労働者すべてがこの手当てを受け取れるようにしていきたい」と語った。

息子が原発で働いているという女性は、「福島第一原発で働く労働者の状況は、深刻極まりないところまで来ている。もしかして暴動が起こるかもしれない。あってはならならいことだが、起こってほしいという思いもある」と複雑な胸中を明らかにされた。

これから拡大する被ばく労働現実を見据えた活動への決意

さまざまな立場の方からの衝撃的な発言により、集会参加者は、報道でしか知らなかった被ばく労働の実態を身近な課題として感じることができたと思う。

このネットワークは、労組のネットワークではなく個人のネットワークを前提にしている。そのため、労働組合だけでは取り組めない課題、避難所や住民を対象にした健康相談、労働者への相談活動や行政交渉を研究者や医療従事者とともに取り組んできた。

同時に、福島原発事故で、原発修復作業作業だけでなく、廃炉作業、除染、清掃、運送など「あらゆる労働が被曝労働」になっている状況が明らかになった。これにどう対応するのか、が厳しく問われていると思う。

まだまだ開始されたばかりの被ばく労働者を支える運動だが、このネットワークの指針とも思える2つの発言を紹介したい。

ひとつは、いわき自由労組の桂さん。桂さんは、震災直後から仮設住宅を回って労働相談に取り組んできた。そこでは避難民、漁民、農民すべてが仕事を失って失業者となっていた。また、自身が働く小名浜港も地震から5カ月間物流が止まった。仕事がないので、組合員である小名浜港の日雇労働者もその間、原発修復の仕事に行っている。彼らの生活を無視した反原発の取り組みには疑問があると同時に、労働者が健康でずっと働ける取り組みを作らなければならない。

また収束作業・除染で働く労働者のほとんどが、年収200万円以下で宿舎住まいだから、会社と闘えば住む場所をなくす。原発労働者が一時的に避難できる場所をつくりたい。との発言だ。

もうひとつは、呼びかけ人のひとりである日雇全協の中村さん。「いわき市内に土地を確保した。ここを拠点にして、みんなと出会える場にしていきたい」。

高濃度放射線のなかで働くという危険な状況に加えて、重層的下請構造の元での不安定な雇用。廃炉・収束作業と拡大する除染作業に対応するために、全国から労働者がかき集められている。これから拡大する被ばく労働に、否応なしに多くの労働者が直面することになるだろう。二人の発言は、現実を見据えて困難な課題に一歩一歩着実に迫ろうとしていく強い決意が感じられた。

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