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2012/11/7更新

死体に小便をかけ、コーラン 燃やした米兵は不起訴

翻訳・脇浜義明

ビル・ヴァン・オーケン(human wrongs watch.net)

一時凌ぎの謝罪と防止対策

今年1月、米海兵隊員が殺害したアフガニスタン人の死体に小便をかけたり、コーランを燃やした事件(2月)が起きて、流血の暴動を招いたが、これら米兵は刑事裁判で不起訴となった。他にも、海兵隊狙撃隊の兵士が、ずたずたになったアフガン人の死体に小便をかけながら、侮辱的会話を交わして笑っている姿をビデオに撮って楽しんでいた問題も明るみに出た。

8月27日、海兵隊と陸軍高官は、兵士の行政処分を発表しただけで、名前の公表は拒否した。行政処分というのは、降格または減給、外出禁止、書面戒告である。しかし、アフガニスタン社会にとってその程度の処分は、いたずらをした子どもへの軽いお仕置き程度に過ぎず、この処分結果は、占領軍に対する新たな暴動の引き金となった。米国防総省は、アフガンの米軍基地が厳戒態勢に入ったかどうかに関するコメントを拒否した。

2月のコーラン焼却事件は、海兵隊員による死体侮辱ビデオ発覚の1カ月後に起き、米軍やNATO軍基地への大衆暴動が吹き荒れて、6人の米兵を含む41人の死者が出た。

そのとき、米軍高官は隊員の冒涜的行為は「重罪」で、そのように処理する、と声明をだした。ヒラリー・クリントン国務長官も、アフガン人死者への放尿は戦争犯罪だと公式に宣言し、アフガン駐留米軍副司令官のカーチス・スカパロッティ中将は、「個人的娯楽のために暴徒の死体を冒涜、侮辱、記念写真やビデオを撮影することは、重大な戦闘法違反になる」というメッセージを隊員に伝えた。レオン・パネッタ国防長官は、「関与した者には最大限の責任をとらせる」と言った。

オバマ大統領も、コーラン焼却事件についてアフガン政府に謝罪書簡を送り、「関与した兵士に責任をとらせ」、同様な事件が起きないよう処置をとる、と約束した。傀儡政権カルザイも「責任者には正式に裁判を受けさせる、と米政府が約束した」と、国民に伝える声明を出した。

死体冒涜で行政処分を受けた3人の海兵隊員は有罪を認め、軍法会議を回避した。コーラン焼却事件の処分は、4人の陸軍士官と2人の志願兵に戒告書面を発行しただけであった。

ブライアン・G・ワトソン陸軍准将を団長とする調査団は、バグラム米空軍基地内の刑務所で問題となったコーラン焼却疑惑に対しても、「(被告たちは)正しい方法でなく簡単な方法をとっただけにすぎない」と断定した。つまり、「アフガン人囚人たちがコーランや宗教テキストを使って秘密連絡を取り合っているという疑惑に対処しただけだ」というのだ。

軍は「燃やされたコーランは100冊」としていたのに対し、実際は500冊燃やそうとしていたことも明らかになった。他にも刑務所図書室にある宗教書を「過激書物」と勘違いし、他の非宗教書も加えて、計1500冊を燃やそうとした。それらがゴミ袋へ入れられて基地の焼却炉へ持ってこられたとき、中にコーランが混じっているのをアフガン人作業員が発見して、焼却を免れた。調査団は「コーラン冒涜とかイスラム教侮辱などの悪意」はなかった、と結論づけている。

拡大する不信と怒り

コーラン焼却後の半年間で米軍とアフガン軍との「不信感」は深まる一方、同じ陣営内でアフガン兵やアフガン警官が、自分たちを訓練する任務にある米兵を襲撃する事件が激増した。

近例をあげると、北部ラグマン地方で、アフガン国軍兵士が指導米兵将校たちにロケット砲を発射して2人を殺害し、自分も米兵の反撃で殺された。年初めから今までで、このような襲撃で42人の米兵や外国占領軍兵が殺害されている。最近の一週間だけでも米兵11人が殺害された。

2011年にこのような陣営内部からの襲撃で米占領軍兵35人が殺され、増加の一途である。米軍司令官は、「個人的諍いから生じた個別的不祥事にすぎず、それ以上の意味がない」と、決まり文句のように言っている。現地最高司令官ジョン・アレン海兵隊大将は、「ラマダン断食の影響だ」とさえ言っている。

とはいえ、ペンタゴンの憂慮は深く、米統合本部議長マーチン・デンプシー大将は急遽カブールへ飛んで、米軍とアフガン国軍両方に「事件を未然に防ぐように、もっと警戒を厳重にせよ」と命じた。

警戒厳重の一つは、「盟友」アフガン人の襲撃に備えて絶えず完全装弾しておけ、という米兵への命令である。これはアフガンの軍人と警官を全て潜在的殺人者と扱うことなので、ますます緊張を高めた。

一方、米軍司令官のバラ色の裁定にもかかわらず、米軍が訓練する傀儡政権の軍隊は、占領に対する武装反乱を抑える能力がまったくない状態である。今週、アフガニスタン国防省は、過去2カ月でアフガン国軍兵士600人が反乱勢力によって殺害されたとする報告を公表した。最新例をあげると、南部へルマンド地方の検問所が攻撃され、アフガン国軍兵10名が死亡、4人が負傷した。他に5人が襲撃者といっしょに検問所を去ったが、それは軍離脱なのか捕虜にされたのか不明だという。

アフガニスタンに展開する米軍の兵数は、来月末までに6万8千人に減らされる予定らしいが、それでもオバマが大統領に就任した頃の人数の2倍である。しかも残留軍の撤退予定表はない。米政府が2014年までに「全戦闘部隊を引き上げる」と公約したにもかかわらず。占領軍副司令官のカーチス・スカパロッティ中将は、6万8千人の兵力を「2013年を過ぎてもアフガンにおいておくべきだ」と、記者会見で主張した。かりに2014年に米軍撤退があったとしても、数万人の軍「顧問」や「訓練指導者」、および特殊部隊が、無期限にアフガンに残るであろう。

米国大統領戦では、どちらの候補者も、「もう11年にわたる戦争を終えてほしい」と願う国民感情に、絶対に触れないようにしている。

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