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2012/2/20(月)更新

東大阪市・生活保護行政適正化推進本部設置

受給者に厳しく組織に甘い「適性化」

 1月17日、東大阪市生活保護行政適正化推進本部(以下「推進本部」)を設置するというニュースが流れた。

 「@悪質な不正受給や貧困ビジネス事案の抑制、A医療・介護扶助の適正な実施、B効果的な自立支援対策を確立・実施することを目的」にするという。推進本部は、市長を本部長とし、副市長および福祉部門、経営企画部門、行政管理部門、財務部門の部局長で構成される。適正化に際し警察との連携は不可欠であるとし、4月から立ち上げるチームには嘱託職員として、警察OBの増員を計るという。

 「生活保護行政適正化」の名の下に、生活保護受給者のバッシングや、受給資格があるにもかかわらず水際で門前払いされるケースが増加するのでは、元も子もない。現状について生活福祉課にて話を聞いた。(編集部・栗田)

ケースワーカーは増やせないのか?

──推進本部を設置した目的は、「不正受給や貧困ビジネスへの対策強化」のためとのことですが、個人レベルの不正受給に対しては、ケースワーカーの体制を充実させて対応していけばよいですよね?

生活福祉課…東大阪市のケースワーカーは、現在、正規職員65人、任期の定まった契約の職員が43人です。そして補助職(非常勤職員)は38人です。有期雇用の職員は、2010年9月から雇用開始されたのでまだ2年にも満たない。正規職員も異動がありますので、キャリアが長い人は少ない。非常勤の方も、キャリアは長くないです。

 社会福祉法で決められているケースワーカー1人が担当する利用世帯の数は、1人につき80世帯です。しかし現在は、約130世帯のケースを見る状況です。

 それならケースワーカーの体制を強化するべきなのですが、生活保護については、本来は100%国が出すべきなのに、事務の経費等、結局自治体の負担が増えていき、難しい状況です(※1)。国からの補助金のメニューも、「就労支援」といった違う項目はありますが、ケースワーカー重点という対策はありません。

< 注 >

※1  生活保護費のうち、4分の3が国の負担、4分の1が地方の負担。大阪市では、大阪市の負担の4分の1部分(729億円)については、国から「地方交付税」として措置される制度となっている。
 ケースワーカーについては、社会福祉法でそれまで拘束力のある法定数と定められていたケースワーカー1人あたりの持ち世帯数が、地方分権の流れの中で、拘束力のない標準数になったということがある。単純に地方自治体の負担が大きいゆえに、ケースワーカーを増員できないという話ではない。

※2  山本病院診療報酬不正事件は、奈良県大和郡山市の医療法人雄山会「山本病院」が、生活保護受給者に対し、架空の治療を装い、診療報酬を不正請求したとされた事件。 2009年に発覚し、同7月に同院理事長・事務長と関連業者の社長が逮捕された。

就労支援の効果は数パーセント?

──就労支援といっても、実際仕事にはつながっているのでしょうか?

生活福祉課…ハローワークOBである就労相談員を活用して、使っていく考えです。国の考えでは、ハローワークとの連携をとるようにということです。市独自では、就労支援員を考えています。

 ハローワークOBではなく、企業のコンサルタントなどをやられてきた方々です。就労の結果については、個々には成果があるんですが。年間数十件ですね。

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──東大阪市の生保受給世帯は約1万4000人で、高齢世帯等が含まれているとしても、数十件は厳しいですね。

 悪質な病院にどう対応するのか?

──生活保護費の内訳を見ると、半数近くは医療扶助です。以前よりは囲い屋は減っていると言われてますので、レセプトの不正請求や過剰投薬等の病院が、この適正化対策のターゲットとなりますよね。

生活福祉課…「不正請求事案や貧困ビジネス対策」を運営方針として掲げていますし、医療・介護の対策職員と連携を取ることを考えています。

 病院についてですが、病院は介護と違い、診察をする際に書面での「契約」は結びませんよね。投薬は医者の権限にまかされています。山本病院(※2)のような事例もありますが、数として多いわけではない。相当悪質な医療、例えば訪問診療を行なっていないのに、訪問診療のレセプトを申請する、などの悪質な場合は対応しなければなりませんが、過剰投薬等は線引きが難しいと思います。

──しかし、病院の「不正請求」というのは厳然として存在していますよね。

生活福祉課…生活保護の医療扶助を考えるときに、当事者がいかなる診察を求めているか?の声を上げやすくすることが課題でしょう。生保の医療扶助を、措置として「最低限度の医療はここまで」と押しつけることはできません。不正請求の問題というのは、既に「起きてしまったこと」となりますが、予防的な観点と言いますか、不当な請求や治療をされたときに、本人が声を上げられるようにすることも重要です。

 取材を終えて

 ケースワーカーの増加の見込みはなし、就労支援といっても、就労そのものが厳しい。さらに、病院の不正に対してはむしろ当事者が声を上げられるようにしていく、という状況では、生活保護受給者個人にばかり焦点が当てられ、組織が行う不正には甘い、という印象が残った。

 最後に、「なぜ警察OBを雇うのか?」質問した。つまり、「府警OBの嘱託職員増員による不正受給対策」とあったからだ。生活福祉課曰く、「詐欺など犯罪の問題もあるので、その場で相談しながら、対策していけたら」ということだった。警察との連携を取るということが、なぜ嘱託OBを雇うことにつながるのか。そのような金があったら、それこそケースワーカーを雇うべきではないか、と質問したが、回答はなかった。     

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