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【現地報告】 イギリス若者暴動

希望奪われた若者の反乱

警察への不満根底に 

■ロンドン 在住 樺浩志

 ヨーロッパでの若者たちの反抗が止まらない。ここ数年、ギリシャ・スペイン・アイルランドと、経済危機がEUに飛び火する中、経済格差・失業の問題でしわ寄せを受けている若者たちが、「暴動」という形で異議申し立てをおこなっている。

8月に入り、イギリスでおこなった「暴動」について、イギリス在住の樺浩志さんにレポートを寄せてもらった。(編集部)


警官による移民殺害

この夏、英国社会にも激震が起きた。暴動である。ロンドン近隣で始まった騒乱が、毎夜のようにロンドン各地、そしてイングランド各地へと広がり、ここ数十年で最大規模の大暴動となった。

燃え上がる歴史的建築物、商店を略奪する覆面姿の群集、放火された建物から飛び降りる住人、怪我をした人を助けるふりをして窃盗を働く暴徒たちの姿、等が大写しで報道され、主要メディアは暴徒を断罪する声であふれた。

保守連立政権のD・キャメロン首相は強調する。「この暴動は、人種や貧困問題でも削減政策の問題でもない。暴徒にもその被害者にも白人、黒人、アジア人がいる。この暴動は、自制心というものを全く持たず、事の良し悪しを考えない者たちが引き起こした、純然たる犯罪行為である」と。

だが、メディアのインタビューに答える人々の中には、「人種差別が原因だ。なぜこの事実を無視するのか?」等、政府や警察や差別を指弾する者が絶えない。

「長年にわたる我々住民と警察との軋轢こそが今回の暴力事件の根本にある」という声を、ロンドン北部の地域新聞『トッテナム&ウッドグリーン・ジャーナル』は伝える。「黒人青年ばかりを狙い撃ちにした警察のストップ&サーチ(捜査令状なしで行われる尋問や身体捜査)こそが、人々の憤慨の原因だ」と。そして「地域に青少年センター等の若者の集まれる場所がないことや、貧困層を直撃する政府の削減政策も、若者たちの希望を奪っている」と。

16才少女への殴打で暴動へ

暴動の最初のきっかけになったのは、警官によるマーク・ダッガン氏(ロンドン北部に住む29歳の黒人男性)の殺害だったことは間違いない(8月4日)。警察は、遺族には全く連絡をしない一方、メディアに対しては迅速に情報を流した。「ギャングのダッガンが警官の胸に向け拳銃を発砲。警官はすぐにこのガンマンを撃ち殺した」という報道が、ダッガン氏の家族に届いた「訃報」となった。

自宅にまで押しかけてきた記者に対し、氏の母親は答えた。「息子はギャングなどではない。警察が息子を殺したのだ。息子は黒人で、それが何を意味するかは分かるでしょう?」と(ちなみに脱稿段階の今分かっている限りでは、ダッガン氏は発砲などしなかった。発射された銃弾は2発とも警官によるもので、一発はダッガン氏の胸に命中して氏の命を奪い、もう一発は氏の腕を突き抜けて警官の無線機に当たった、ということらしい)。

遺族が遺体を確認できたのは8月6日の昼、射殺事件から2日も経っていた。そしてその夕方5時、遺族が開設したフェイスブックページの呼びかけに応え、トッテナム警察署前でデモが行われ数百人が集まった。当初平和的に行われていた抗議行動が、なぜ8時20分から暴動に発展したのか、この間に何が起きたのかを報じるメディアは(筆者が目にした限りでは)ない。唯一、左翼の一紙が「にらみ合いが続く中、16歳の少女が数人の警官によって殴打された。そして暴動が始まった」と伝えている。

フェイスブックには、「今夜トッテナムで撮った写真や動画があったら、アップロードして共有しよう。なぜ今回の件が暴動にまで発展したのかを伝えよう」等のメッセージが掲載された。「アラブの春」同様、英国暴動でもソーシャル・ネットワークが情報拡散に使われたのである。

ただし、その後暴動がロンドン各地(翌7日)に、さらにはロンドン以外の各地、特に移民の多く居住する諸都市に飛び火(8日)していく過程では、フェイスブックやツィッターはあまり使われなかったようだ。警察がツイッター情報を探知して、ターゲットにされたカーニバルを事前キャンセルさせてしまった例もある。

代わって今回の英国暴動で最も使用されたのは、無料で一斉送信可能でしかも匿名性が高いブラックベリー・メッセンジャー機能(BBM)だった。「○△に集まれ!破壊された店から商品をただでゲットしよう!くそったれのサツなど、我々の暴動で押し返そう!」「兄弟を見かけたら敬礼を!サツを見かけたら撃て!」等のメッセージが流れたとのこと。この、いま若者に人気のあるBBMによる情報拡散、移民が多く居住する地域での暴動、という事実そのものが、どういう層が行動に参加していたのかを示しているかもしれない。

貧乏人が生きるための闘い

貧困、特に若年層の高失業率、図書館や青少年センターや公民館等の閉館や削減政策、低収入家庭の高校生への毎週の現金手当て(EMA)の廃止、大学授業料の値上げ、そして警察による日常的な不当尋問と捜査…こうした諸々の現実や政策への不満や怒りと、今回の暴動は全く無関係だったのだろうか。討論番組でこういう疑問が飛び出すと、他の参加者から「社会的背景を持ち出して暴動を正当化するな!」という意見が返ってくる。それが今の英国の現状だ。

(以下の全文は1422号を入手ください。購読申込・問合せはこちらまで。)

参考サイト 「現在起きているロンドン暴動の様子を克明に伝える写真41枚

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