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更新日:2011/04/25(月)

[社会] ポスト開発&脱成長の立場から上関原発問題を考える
──中野佳裕(立命館大学客員研究員)

「一次産業だけでは食べていけませんよ」の根底

上関原発について私が、深く問題としたいのは、経済開発や工業化や原発誘致を進める背景には、常に「近代的な生活様式とは異なる論理に基づく生活を低く価値付け、あるいは否定する」という認識論上の排除と差別の論理が働いている、ということです。

私がポスト開発や脱成長というテーマの下で問題にしているのは、開発主義や経済成長中心主義がもたらす排除と差別の論理であり、また社会全体の価値観や生活様式を画一化する背景にある権力関係や「眼差し」の暴力です。

祝島の生活とエネルギー政策の未来を扱った映画『ミツバチの羽音と地球の回転』(鎌仲ひとみ監督、2010年)には、海上で祝島の島民と中国電力の船が対立する場面が収録されています。埋め立て工事用のブイの設置を防ごうとする祝島の島民に対して、中国電力の社員は「一次産業だけでは食べていけませんよ」と諭します。

「一次産業だけでは食べてはいけない」と評価するのは、贈与と互酬に支えられた島民の生活実態を認めていないことの反映でしょう。このような「否認」が起こるのは、経済成長による近代化を社会発展の理想とする「経済開発幻想」に、電力会社だけでなく、日本の産業界や政府が未だに囚われている証拠ではないでしょうか。

「誰の所有物でもない、人間と自然との間の互酬性によって成り立つ生命流域としての海」を「コモンズの海」といいます。祝島の島民は、約1000年にわたり、地元の自然環境の恩恵を受けながら、このような共同管理・共同利用の生活圏を持続的に再生産する生活を行ってきたのです。

戦後、日本全体を通じて、祝島島民が営むような入会的漁業を「前近代的なもの」として低く価値づける言説が、日本の高度経済成長の進展とともに制度化されてきました。この言説制度は、日本全体を生産力中心主義の経済によって構造化する中で、コモンズとしての海や山野を否定し、破壊する開発政策を正当化する機能を果たしています。

生物文化の多様性を認め、山野と海を誰の所有物でもないコモンズとして認め、陸地中心の世界観だけでなく島嶼からみた海洋ネットワークとしての世界観を認め、日本の社会発展の道筋を多元性と贈与の関係に基づいて再構築することはできないものでしょうか。

原発計画に30年近く反対している祝島島民の希求を、このような歴史的文脈において、またわたしたち日本社会全体の問題として、捉えてみてはどうでしょうか。

上関原発計画の全体像とその意味は、コモンズを否定するこの言説制度の歴史的発展の中で検証することで、より明確になってくると思います。

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