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▲黒田充さん
▲国家戦略相時から納税者番号の「本格的に導入の検討に入るべき」と語っていた菅首相
更新日:2011/01/05(水)

[社会] 社会保障の衣を着た国民総背番号制がやってきた!!

財界主導の国民総背番号制=税と社会保障の共通番号

国民総背番号制が一気に進みそうな気配だ。12月6日に民主党が党としての提言を発表したのに続き、政府・与党社会保障改革検討本部も「安心と活力の社会保障ビジョン」を提出(12月8日)。「自助・自立と社会保障の公正をはかる」ためとして、社会保障番号制度の導入を求めた。2013年にも実施を目指すという。

格差が広がる中、所得の再分配を行う上で、課税所得の正確な把握のためには「総背番号制は必要悪」との意見もある。しかし、民主党政権が進める総背番号制は、「財界主導で自公政権時代の考え方をそのまま引き継ぐもの」であり、「自己責任を強調する新自由主義の強化にしかならない」と黒田充(自治体情報政策研究所)さんは、語る。

12月12日、西宮で緊急学習会が行われた。黒田さんの報告内容とインタビューを再構成して要点を紹介する。(文責・編集部)

パート・アルバイトの収入捕捉 サラリーマンのWワークもしっかり課税

菅首相は、「強い社会保障」を掲げ、国民総背番号制導入を一気に進めようとしている。しかし、課税の把握で真っ先にターゲットになるのは、サラリーマンだろう。

財界が、納税者番号導入を進めたい背景は、雇用の流動化である。生涯雇用は例外的となり、度重なる転職、派遣労働者の雇用などで、給与・社会保険の事務処理は極めて煩雑になっている。

このため、サラリーマン全員に番号を付与し、課税・社会保険や福利厚生を一括コンピュータ処理できれば、事務作業は簡便になる。派遣労働者を雇っても番号付きならば、管理費用を大幅に軽減できるのである。

結局、最初に納税者番号を使わされるのは普通のサラリーマンで、彼らの夜のアルバイトなどがしっかり把握されて課税されるようになる。アルバイトや雇用先が次々変わる非正規雇用労働者も同様だ。

流動性の高い若年・女性労働者のダブルワーク・トリプルワークも、全て収入が把握され、しっかり課税されることになる。納税者番号でターゲットにされているのは、金持ちではなく、実は普通のサラリーマンであり、若い非正規労働者などである。

納税者番号導入を推進する人々は、よくスウェーデンなど北欧諸国を例として持ち出すが、これらの国々は総背番号制を導入したから福祉が充実したわけではない。福祉充実に向けた長い議論と闘争の末に、その手段の一つとして導入された。

一方、日本の戸籍制度が課税と徴兵のために作られてきたように、根本思想が違うのである。日本で総背番号制を導入するなら、まず社会保障制度をどうするか?という議論をした上でなければ、全く違う目的に利用されることになるだろう。

我々が正確に所得を把握して課税されるべきだと考えるのは、株式投資や外貨取引などで濡れ手に粟で大金を稼ぐ人々の資産だ。そうした資産課税に、総背番号制は有効であるようなイメージがある。

しかし、政府にその意図は全くない、と断言できる。だから、経団連は反対しない。不労所得やその資産に課税するつもりなら、銀行で本人確認する際に資産家だけに番号を用いるという制度が、学者レベルでは議論されてきた。しかし、それは絶対に実現しないだろう。

「金持ちへの課税のための総背番号制」というのは、とんでもないインチキである。

共通番号制への翼賛体制リードする経団連

12月6日に民主党が党としての提言を発表したのに続き、政府・与党社会保障改革検討本部も「安心と活力の社会保障ビジョン」を提出(12月8日)。10日には、民主党案と政府案を擦り合わせたものとして、「社会保障改革の推進について」ができあがった。同文書の中には社会保障番号の導入が明記されており、これが現政権の最高基本方針となった。

ただし、参院で民主党は過半数割れとなったので、法案が通らないのではないか?との危惧が聞かれる。このため基本方針には、「野党に協議を提案し成案を図る」と示されており、既に準備万端で進められている。

12月5日に「われわれ生活者のための共通番号推進協議会」が発足したのだが、発足集会(東京)には、民主・自民・公明・みんなの党の幹部が顔をそろえ、「制度導入を目指す方向で一致」したのである。反対を明確にしているのは共産党だけで、共通番号制に関しては翼賛体制ができあがっている。

導入への動きをさかのぼるならば、経団連は、2004年に「社会保障制度等の一体的改革に向けて」を自民党政府(当時)に提出している。内容は、@社会保障・福祉制度に共通する個人番号の導入、Aその番号は納税者番号としても活用する、B国税局と社会保健庁を統合する、などだ。

基本内容は、今回の与党政府案と同一である。09年総選挙で民主党がマニフェストに掲げた内容は、経団連の提言を受け入れたものだったのである。

2008年にも経団連は、「税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言」を示し、「給付と負担の『見える化』」(個人が自らの負担と給付を容易に把握可能な制度にする)なども打ち出している。

さらに09年には、企業ID、国民IDを一元的に付与し、これをキーとした「全府省庁、全自治体の情報連携を3年以内に完了する」よう、自公政権(当時)に要求した。

政権が変わってからも、経団連の活動は活発である。今年4月に「新たな情報通信技術戦略の策定に関するコメント」を提出。国民総背番号制の整備に向け、2011年の通常国会に法案を提出し、2013年から利用開始するように求めた。

この要求に沿って先の一連の動きがあり、2013年の利用開始に向けて、本格始動したのである。こうした経過を見ると、日本の政治を作っているのは、国民ではなく経団連と言わざるを得ない。

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