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更新日:2010/12/30(木)

[コラム] 井上澄夫/中国船衝突事件で蔓延するナショナリズム

優越感も劣等感も排し、静かに暮らす小国でいいではないか

「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(米社会学者・E・ヴォーゲル。78年)とまでヨイショされた「この国」が、GDP比較で中国に抜かれつつあることが悔しくてたまらない人々が、大勢いるようだ。 

最近の日中間の政治的緊張が極度に排外的な日本ナショナリズムを急速かつ激烈に煽り立てている背景には、上記の焦りや屈辱感が大きく作用している。「尖閣諸島(中国名・釣魚島)」がニッポン固有の領土であるという主張はすでに挙国一致のもので、今やそれを認めない者は「非国民」である。しかし、この異様な〈国民的連帯〉の盛り上がりは、日本が「世界第2の経済大国」の地位からずり落ちつつあるという悔しさをバネとしている。不毛なだけの負の高揚の先に、いったい何を展望しようというのだろうか。

先日テレビで、米国内の世論調査では米国人は圧倒的多数が「米国は世界一の国である」と考えているというニュースを聞いたが、「アメリカ帝国」の落日ぶりはすでに世界周知のことであり、現在の米国人は、おのれの姿を映す鏡を持たないのである。

「亡国に至るを知らざれば是すなわち亡国」(田中正造)である。その「世界一」に尾を振るポチ=日本が多極化する世界で羅針盤を失ってさまよい始めていることも、すでにまぎれもない事実である。

中国の軍拡は、「大漢帝国」(漢は漢民族の意)の愚挙としてただちに中止されるべきである。だが、「人の振り見て我が振り直せ」ということわざがある。日本もまた、おのれの姿をしかと鏡に映してみる必要があるのではないだろうか。

15年戦争の果てに、沖縄戦とヒロシマ・ナガサキを経験しながら、「軍事で事を決する」愚をいささかも悟らず、戦前と同じ発想で世界に臨むこの国のありようこそ、しかと俎上に乗せられるべきことではないのか。

あれこれの国際比較で日本がたとえ世界最下位といわれようが、近隣諸国・諸地域に迷惑をかけず、こつこつ働けば何とか食え、国籍を問わず社会的弱者への配慮が十分でありさえすれば、日本のあり方としてはそれでいいと私は思う。国家間競争にかかわらず、大国志向や覇権主義を放棄すれば、それは可能である。国威などという、有害無益なもののための「国家ごっこ」は、もうやめたい。

小国でいいではないか。「大きいことはいいこと」であると私は思わない。ユーラシア大陸の東の端の、海に囲まれた小国で静かに暮らす。それで十分と、私は思う。(「反戦の視点・その97」から抜粋)

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