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更新日:2010/11/01(月)

[コラム] 迫共/保育の人材はなぜ枯渇するか

保育士は今時の若者にとっては「お仕事」ではない?

6月末、ある保育士が突然、無断で欠勤した。出勤時間を30分過ぎても連絡がない。電話しても出ない。事件にでも巻き込まれていないか心配になり、自宅に電話したが、留守電が対応するばかり。

その後、保育士の父親からの電話で、同じクラス担任の保育士が子どもを虐待していて、娘にも体罰を加えていると聞かされた。寝耳に水の内容だ。すぐに担任に確認したが、「事実無根だ」という。うちの園は保育室が3つしかない。虐待だの体罰だのがあれば、他のクラスの保育士が気付くだろう。私も毎日何度か様子を見るが、兆候はなかった。

むしろ、職員同士の助け合いがとても機能しており、温かい配慮のある職場だと、自負している(もっとも、私にこの環境を作る能力はない。気持ちよく働いてくれる職員にいつも助けられ、気付かせられている)。

この保育士からは2週間後、退職願が届いた。電話は父親としか繋がらず、本人の思いは最後まで分からない。学校推薦で来た大卒の新人だった。父親は娘の話を真に受け、卒業校にも連絡したという。娘を思う気持ちは分かるが、こちらも彼女の、社会人として理解しがたい行動に憤り、大学に報告せずにはいられなかった。

保育園はマンパワーに頼らざるを得ない職場である。泣きわめく子どもの気がすむまで向かい合い、食事をしながら汚物の処理もしなければならない。掃除や製作など、地味な作業もおろそかにできない。特に、新人にとっての夏は正念場である。入職後3〜4ヶ月もすれば、複数担任でもリーダーを任されるし、行事の準備もある。ただでさえ体力を消耗する時期だ。新人がへばるのも無理はない。ここで何クソと踏んばれるかどうかが、この後を決定するのである。

「最近の若者」という言い方は嫌だが、踏んばるどころか、吹けば飛ぶような辞め方をする若者が多くなった。「本当は就職したくなかった」などと、理解不能な言葉を聞いた知人の園長もいる。きっと今時の若者が想像する「お仕事」とは違うのだろう。昔で言えば下女や子守、奉公人のような仕事も含まれている。

昭和初期までの奉公には、結婚前の女子に対する教育の意味が含まれていた。嫁ぎ先に不自由をかけないように、炊事・洗濯・裁縫・育児などの基本を身につける期間であった。結婚は「女の仕事」に終身雇用されることだったから、よりよい雇用先にありつくために修行した。今でいう資格の勉強や、インターンのようなものである。今の若者が様々な「お仕事」の中から保育を選ぶ感覚とは、ずいぶん違うと思う。

子どもは可愛い、でも下働きは嫌だ、好きな仕事だけしたい、という感覚では、パートか派遣の保育士がせいぜいである。もともと賃金が低いから、正職員は割に合わないということにもなる。結果として、まともに仕事を任せられる人材が慢性的に不足する。これが進行すれば、数年先にはカタコトを喋る外国人保育士が、低賃金で雇われる事態になるかもしれない。国籍や人種による差別はいけない。親身な保育をしてくれて、仕事ぶりも真面目であれば文句はないはずだ。少しばかり寂しい気もするが…。

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