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更新日:2010/10/25(月)

[コラム] 深見史/186歳、めでたいことじゃないですか!暑くるしい「不在高齢者問題」報道

「戸籍上の生存」は「社会問題」なのか?

「ついに186歳! 勝海舟の1歳下『戸籍上生存』」と題する読売新聞は、以下のように述べる。

「高齢者の所在不明問題を巡り、戸籍上は生存する江戸時代生まれの人が、26日も相次いで明らかになった。

山口県防府市は、文政7年(1824年)生まれの186歳男性の戸籍が残っていると発表した。この前年に勝海舟が生まれている。

滋賀県甲賀市でも、文政11年(1828年)生まれの182歳男性、山形県酒田市で天保8年(1837年)生まれの173歳女性の戸籍があった。兵庫県姫路市によると、170歳男性を含め120歳以上の906人が戸籍上生存。川崎市も戸籍上120歳以上が462人で、住民票はなく、年金などは受けていない。いずれの自治体も、法務局と相談し除籍を検討する。」(8月27日3時2分 読売新聞)

いったい何が言いたいのか。ただ珍しい個人情報を手に入れてうれしいのか、除籍していない当局の怠慢を指摘したいのか。まさか、「高齢者不在問題」などと銘打ってしまった自分たちのフィーバーにむりやり連結して、「戸籍上の生存」を「社会問題」化したいなどという、アホなことを考えているのか。

「戸籍上の生存」と「高齢者不在問題」には、何の関係もない。死亡届を出さなければ、職権消除されない限り、「戸籍上生存」するのはあたり前のことで、それ以上でもそれ以下でもない。特に必要がなければ自分の戸籍がどうなっているかなど気にしないのは、通常の感覚だろう。それがどうしたというのだ。

実は私の手元には、100歳を超える「戸籍上生存者」の戸籍簿写しがたくさんある。この人たちは20代で外国に移民し、その地で生涯を閉じた人たちだ。「戸籍上生存」していようが死んでいようが、本人たちには何の問題もない。子孫たちがそのことで問題を感じれば、正式に死亡届を出せばすむだけのことだ。「ついに186歳!」などとうれしそうに叫ばれる理由はない。

「不在高齢者問題」が年金不正受給のことを指しているのなら、年金から天引きされ続けていたはずの介護保険料の問題が語られないのはなぜだ? その管理責任はなぜ問われないのだ?

「不在高齢者問題」が「家族の絆」の問題であり、「家族」の復権にむすびつくと大喜びした連中は、「不在高齢者」の「家族=子」がすでに超高齢者になっていること、「不在高齢者問題」は「家族の絆」問題にはなり得ず、高齢者の生活権の問題にしかならないことにたちまち気づいたらしいことは、ありがたい。

「不在高齢者問題」は、「家族の絆」問題ではもちろんなく、「年金不正受給問題」は、結果の一つでしかない。希薄な人間関係、住環境の変化等々は、もちろんある。社会の変化がこうした結果を生み出したことには、間違いない。

しかし、例えば、葬式なんぞしなくてもいいことなんだよと、火葬料は自治体が出してくれるから心配いらないよと、墓なんかなくてもいいんだよと、言ってくれる人がいたら、この「問題」の一つは必ず片付いたはずだ。家と墓に縛られ、その意味のわからないまま悩み、その答えが出ないでそのままになっている人は、実は相当に多い。この人たちにたどり着き、家や墓や骨なんか実はどうでもいいことなんだよ、大事なのは生きている人がしっかり生きることなんだよ、と伝えることが必要なのだ。

世界に冠たる住民管理社会である日本で、それができないはずはない。マスコミは、くだらない戸籍探しをやる暇があったら、家と墓と骨に呪われている日本社会の底を語れ。

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