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更新日:2009/12/31(木)

[海外] オランダ/風車の国から日本を見れば 大学院は出たものの…
──小淵麻菜(ユトレヒト大学研究員)

悪化するオランダの若者失業率

先日、大学院で新入生受け入れに携わっている友人と話していたら、「10年後には、60%のオランダ人が修士号を持つと予測されている」と言うので、いささか驚いた。

オランダは人口1600万の小さな国で、識字率は99%(日本と同じである)。教育は行き渡り、高等教育は優れている。

しかし、オランダの教育制度、大学数、国家予算などを考え合わせると、60%ものオランダ人が修士号を持つというのは大袈裟ではないか。それにしても、仮にもそんな予測が出される実際の状況はどうなっており、どのような背景があるのか? そして、「高学歴者が増大する」というのは、社会的に何を意味するのだろうか?

オランダでは、昨年アメリカに始まった株の大暴落による大恐慌は、国民の生活にすぐには影響しなかった。

しかし1年を経て、現在の失業率は5%と悪化し、来年には8%になると予測されている。ここで注目するのは、現在失業率が最も高いのが、15歳から24歳の年代で、その失業率が10・8%にも達しているという事実だ。つまり、ほぼ10人に一人は、学校卒業後初めての就職がままならないということになる。

学校を卒業して仕事に就くのは、ごく当たり前のことである。仕事をしなければ自分を養えない。少なくとも自分を養えるだけの労働をして独立することは、社会における個人の責任でもある。しかし、就職が昨今のように厳しい社会状況は、高学歴者が増加する傾向を生んでおり、しかもこれは必ずしも就職に有利とは限らない。

空白の時間を避けるための進学

「卒業しても就職の機会に恵まれない」という状況に直面して、「とりあえず修士課程に進む」という選択肢が存在する。友人によると、現在大学院への進学申し込みが殺到しているそうだ

卒業後ストレートに就職することは、日本に限らずオランダでも、社会から認められる人生の重要な条件である。もしも就職ができない場合は、「空白の時間」を持たぬようにと、政府までもが修士課程への進学を奨励しているというのだ。

大学院の教育は、より専門性が高い。修士号の学位を取るには、一定の知識、考える力を身につけて修士論文を書かなければならないから、覚悟が必要だ。とりあえず進学しても、意欲がない者は修士号まではたどりつかない。

東京近郊のある大学の知人教授が話してくれたのは、まさしく日本でも、就職にありつけず「とりあえず大学院」という背景で進学して来た者が何人もおり、本当に院生なのか?と疑うような者もいるという話である。

高度な内容で課題を増やすと、本当に学びたい学生は一生懸命ついてくるが、大半の学生には不満となる。学生によって無記名で行われるコース・教授の評価が落ちる。そのため、オランダでは学生が興味のある題材を使って楽しく授業をする風潮がある。

大学は、学びたい者が努力して学ぶ場、その学業に対して学位が与えられる場というより、はじめから社会的立場を得るための学位を取りに行くところとなっている。このような風潮の中、高等教育の水準は下がりつつあると懸念され、これは日本でも長い間の問題である。

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