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▲生活賃金を要求した公務員労組ユニソンのストとデモ郵便労働者の波状スト、ピケ現場。どちらの労働争議でも、移民労働者の姿が目立っている。
更新日:2009/10/12(月)

[反貧困] 既存労組が、非正規・移民労働者の組織化を支援
──ロンドン在住・小野信彦

金融危機に抗する労働運動

金融危機に対し、世界の指導者達はわずか6ヵ月のうちに1兆ドルを銀行救済に投じた。その後も、金融機関には、手厚い追加対策が続けられているが、この間、非正規労働者は次々と解雇され、中小企業倒産も続く。

こうした事態に対し、世界の労働運動は、どのような対抗行動を取っているのか?各地の情況をまとめてみた。

保守的なものも含めて労組は、労働者の不安、不満、怒りを表明し、「政府は、労働者の苦痛に対し手を打つべきだ」と要求しているが、打ち出す方針は、各国の歴史・労組の性格を反映し異なる。

英国では、反労組法を踏み越えて山猫ストが頻発し、外国人労働者の闘いも盛り上がっている。しかし全般的に観ると、危機に対する根本的大運動や、資本主義を終焉させる提起をする組合は、ゼロに近い。

失業率は、上がり続けており、今こそ労組は本来の役割を果たし、追撃戦に打って出るべき時期だ。紙面の都合で、韓国も含めて掲載できなかった。次号も続けて紹介する。   (文責・編集部)

労働党・ブラウン首相の大罪

労働党党首にして首相のゴードン・ブラウンが「英国の仕事は英国人に」というスローガンを提唱したのが07年9月。首相就任直後の労働党大会だった。このスローガン、実は、かつて国粋主義右翼の『国民戦線NF』が掲げた主張である。ブラウン首相は、口先では差別反対や平等を唱えながら、実際には「テロ対策」を口実としつつ、移民とイスラム教徒をターゲットにした弾圧を強化してきた。

このブラウン政府、公営医療では「財団病院」化(資本が金も口も出す実質民営化)、公営教育では学校の「アカデミー」化(資本が寄付を出し経営やカリキュラムにも口を出す)、大学授業料値上げ(97年に労働党政権が誕生するまでは無料だった大学授業料が今では年3000ポンド=約50万円であり、更に値上げの予定)、と新自由主義路線をひた走っている。自治体でも、業務の外注化・下請け化が進んでいる。

学生の卒業時借金額の平均は20000ポンド強(約400万円)にのぼるが、卒業時に職はない。全体失業率は5.7%だが、16〜24歳の若年失業率は15%を超える。スリやひったくりや自転車盗難は激増。節約のためか、食パンやサンドイッチ材料の売り上げは増加。人々が安価な店舗販売ビールに流れて、パブは全英で1日平均5件の勢いで閉鎖。メディアでは連日のように、「今日は○○の工場が閉鎖され、××人が解雇された」という報道が続く。

頻発する山猫スト

こうした中、英国でもパートや派遣労働者(エイジェンシー・ワーカー)が確実に増えている。低賃金・劣悪労働の職場では、組合の組織率も低い。来英したばかりで英語での意思疎通がまだうまくない移民労働者も数多い。労組ストの際には、こうした非正規労働者がスト破りに使われる事がよくある。このためユニソン等の全国労組は、民営化や外注化に反対する一方で、こうした非正規労働者の組織化に全力をあげている。組合支部を結成した職場では、即座に労組認知と賃上げ要求の労働争議に突入している。

ただ現在までのところ英国では、日本のように「非正規労働運動」が正規労働者の闘いと切り離された形では進行していない。既存正規職労組による非正規労働者の組織化、正規化要求、外注化や民営化に反対し直接雇用要求、という闘いが進んでいる。

ロンドンでは特に移民労働者の運動が重要で、清掃、鉄道、バス、窓口、郵便、空港、ケータリング、どの産業でも、そして特に低賃金の現場労働において、インド、パキスタン、カリブやアフリカ諸国の新・旧移民労働者が大きな割合を占めている。しかも、人数・率的に多いだけでなく、労組運動の先頭に立って闘ってもいる。

今年7月以来、毎週のように波状ストに立っている郵便配達労働者のピケ現場、去年7月に行われた公務員労組ユニソンのストとデモ行進(写真参照)、どの労働争議を見ても、移民労働者が他の労働者と肩を並べ、誇らしげに行動していた。掲げられたスローガンの一つは「我々は皆もともとは移民」「全ての移民を歓迎する」である。

いま最大の焦点は、不況の為に増加する工場閉鎖・整理解雇・賃金カットに対し、「反労組法」を踏み破って反撃に立った現場の闘いである。

元フォードのヴィステオン社では、1ヵ月にわたる工場占拠の末に、600人分の退職手当を勝ち取った。リンジー製油所では山猫ストと支援ストの拡大で、約700名の解雇撤回を勝ち取った。国営ロイヤルメール郵便では、民営化を目論む当局の締め付けに業を煮やし、労組員が支部ごとにストに突入し、毎週のように波状ストが広がった。

これら全てが反労組法的に照らすと「違法」であり、処罰の対象となる。労組本部は反労組法を恐れ、そして労働党政権に気兼ねし、行動を抑制しようとする。だが現場は職場単位で決議をあげてスト・工場占拠に立った。そして、なんと、勝利してしまった。この勝ち取った地平を様々な職場・産業にも押し広げていこうと、末端の活動家達は奮闘の真っ最中である。

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