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更新日:2009/07/19(日)

[コラム] 深見史/日本国籍は高額取引されるほどありがたい?

不可解なるもの、国籍議連

生後認知による国籍取得が可能になった国籍法改正施行から半年が経った。改正国籍法による国籍取得手続が実際どのようなものなのか興味があったので、初めてその相談が来た時には若干興奮した(こういう相談を受けるのが私の仕事です)。

様々な事情で婚姻できない、あるいはしない男女がいる。その間に子どもが生まれると、現行の法律ではその子は「嫡出でない子」という存在となり、現実的な不利益を被る。国連人権委員会が日本に対して婚外子差別の撤廃を何度も勧告しているにもかかわらず、「婚姻家族の保護」のためと称して、今も戸籍・相続において差別が存続されている。

子の母が外国人の場合、婚外子差別は国籍にも及んでいた。両親の婚姻の有無によって国籍の取得ができたりできなかったりした国籍法は、昨年の違憲判決を受けて改正され、両親の婚姻がなくても、認知があれば国籍取得ができることになった。

相談に来た夫婦と子は、どこにでもいる普通の家族だった。事情を聞いて初めて、一見普通に見える家族が実は相当に入り組んだ事情をもっていることがわかる。言われているほど簡単ではない国籍取得届の手続きを行おうとするのには、それなりの事情と理由があるのだ。しかし、普通の家族であることに変わりはない。普通の父と母と、まだ幼い中学生の少女の一家なのだ。

日本で生まれ、日本で育ち、日本語しかできない普通の少女が、日本国籍者を父として生まれた彼女が、「日本国籍を持ちたい」というのは当然のことだ。ここにずっといて、これからもずっといるにもかかわらず、外国籍であれば、1年に1度、あるいは3年に1度、面倒な手続きを行って在留許可を願い出なければならず、いつあるかわからない警官の職質に備えてカードを始終身につけていなければならない。彼女が安心して手ぶらで暮らしていきたいと願うのはあたりまえのことだ。

ところが、そういう人々の存在を許せない人たちがいるのがこの日本の現実だ。平沼赳夫を代表とする「国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会」なるものが、国籍法改正前に示した「想定される偽装認知」には、思わずずっこける。

「一、第三国の女性を、国内の犯罪組織に所属している男性が大量認知して、売春等犯罪に悪用。国際的に「性奴隷」と批判される。

二、国際テロリスト及びその子孫を認知することも可能になる。仮に、正規の日本国籍を取得した「日本人」がテロ事件を起こした時に損なう国の名誉は甚大である。

三、現在、日本の国籍が高額で売買されている現状では、日本国内に長期滞在することを目的として、犯罪組織の男性でなくても、経済的に困窮している男性に高額な報酬で「偽装認知犯罪」が一般的に行われるであろう。

四、第三国で生活している女性が、日本の「社会福祉制度」の悪用を意図して、「特別在留許可」等の目的で第三国で生まれ生活している第三国人の子供を、日本人男性に「認知」してもらい日本入国を果たす。「改正案」には扶養の義務がないので、入国後は「育児手当」「生活保護費」など税金が使われる。

五、扶養の義務が無いことで、国内に短期滞在している第三国人女性が「特別在留許可」取得を目的として、「大金」を支払って日本人男性の子供を妊娠する可能性もある。これは「偽装認知」としての犯罪ではないので、「DNA鑑定」しても防ぐことはできない。」 ※       ※

彼らの妄想のあまりのお粗末さには言葉もないが、腐っても議員なのだから、「児童扶養手当制度」とか「在留特別許可」の名称くらいまともに使って欲しい、認知すれば扶養の義務が生まれる(だから国籍法に扶養の義務なんぞいちいち書かない)ことくらいは知ってて欲しい、と思うのは無理な注文、だろうな。こういう輩が国会議員なのだから、日本の未来がろくでもないことは予想がつく。

この人たちは法改正後から現在もなお、全国の地方議会へ対して「改正国籍法について意見書提出を求める陳情書」運動を展開している。なぜかいくつかの議会ですでに陳情採択もされている。こうした妄想分子の暗躍を許しては、世界に対してさらに恥ずかしい。

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