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▲アルバカーキ市内で。ホームレス生活の男性プラカードを掲げ、ホームレス生活者の人権状況を訴える市民ら。「サンタフェ市内で25人が亡くなった」。サンタフェはニューメキシコ州の州都。同じく、「安定した居住は基本的人権だ」。(「ホームレス状態の解消のためのニューメキシコ連合」New Mexico Coalition to End Homelessnessホームページより)
更新日:2009/02/07(土)

[海外] アメリカのホームレス事情
──玉山ともよ

「なあ、泊めたげような」

「なあ、お母さん、財布かして。お金あげたいねん」―突如7才の娘が車の中で私の財布から20ドル札を出そうとした。慌てて小銭やら、1ドル札をごそごそ探す私…。

これは寒い冬が到来したての頃、スーパーで食料品を買い込んで車に乗り込んだ途端、ホームレスとおぼしき中年の女性に窓越しに声をかけられた時のことだった。小学1年生の娘はまだお金の価値がよくわからず、「お札なら何でもいい」と、とても気前がいい。「どうしてあの人はお金ほしいの?」「それはお金に困っているからよ」と私。娘の頭の中にはクエスチョンマークがいっぱいで、矢継ぎ早に私に質問を投げかける。「何でこのお札(20ドル札)あげたらあかんの?」「いくらやったらいいの?」「じゃあこれぐらいやったらいい?」がばっと小銭をつかんで窓越しに差し出す。

その女性は笑顔で「ありがとう」と言った。微笑んだ口元に歯が抜けているところがあるのがわかった。

「ブロロー」と私がゆっくり車を走らせようとすると、「ねえ、あの人住むとこないの?何でやの?」「それにはきっと色んな事情があると思うよ」「なあ、泊めたげような」「ええっ?」とあせる私。「なあ」と娘に促されて、返事に困る。

見知らぬ人を泊めて万が一こどもたちが犯罪に巻き込まれてはいけないし、長期で宿泊を提供する等、最後まで面倒をみることができないとわかっているために、「厄介なこと」を避けようとして、しどろもどろになる。「ほら、この人泊めたげたら、他のおうちのない人もみんな泊めたげなあかんことになるやん…」などと、適当に理由を見繕って、その場を後にした。

お茶を濁しただけの対応しかできないことにもどかしさを感じつつ、振り返って子ども達を見てみれば、まだ人のなんたるかを知らず、疑うことも知らず、ただ純真に助けてあげようと思っていることを知って、少し嬉しくなった。大人になるにつれて、「厄介なこと」にできるだけ関わりを持たないようにしていくことを当然として生活するようになり、人間の様々な汚いことを見るようになるのだから、せめて今の間はこういう気持ちを持ってくれたことをありがたいとしよう、と母の私は考えた。

退役軍人のホームレス化

前ふりが大変長かったが、ニューメキシコ州アルバカーキ市は、人口約51万人の州内で一番大きい街で、アメリカの他の都市と同じく多くのホームレスの人々がいる。ここでは比較的たくさんのシェルター(12、13ヵ所)があり、ホームレス専門の医院、そしてホームレスの子どものみが通うことのできる保育園までもある。 シェルターの多くはキリスト教系の慈善事業によって運営されており、女性専用やティーン専用もある。食事も施設により曜日が異なっていて、何ヵ所か回れば1年を通して一応食事はとることができるようになっている。

しかしそれでも冬は特に状況が厳しく、最低気温はマイナス5度位まで下がる。昨年度も約60人が亡くなっている。先日12月初めにも、ホームレスの人々の状況を訴える行進があった。

望んでホームレスになる人などいないのは日本と同じだが、一つ日本とかけ離れていることは、退役軍人の多さである(23%。全米成人中、退役軍人は13%)。負傷して軍役を離れるだけでなく、軍に従事した多くの人々は心を病んだ経験があり、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)による家庭崩壊や、アルコールやドラッグへの依存傾向などからホームレスに至る軍経験者が少なくない。退役軍人専用のケアもある。

しかし、ホームレス状態にある人の自立を援助するプログラムは、充分に行き届いているとはとても思えない。経済状況が悪化している中で、誰もがホームレス状態になり得る。事実アメリカでは、約10人に1人が住宅ローンの返済で困った経験があり、またクレジットカードの過剰な使い込みにより、たくさんの人が大小の差はあれ借金を抱え、それはすでに社会的現象にまでなっている。食糧配給制度の利用者は増加傾向にあり、周知のことながら医療保険に入っていない人も多い。ホームレス問題は、すでに誰にとっても死活問題となっていると言ってもいい。現在アメリカ全体では350万人近くがホームレス状態となり、そのうちの約135万人は子ども(18歳以下)である。

ただ手を差し伸べる方法は、極めて困難だ。高齢になればなるほど、就職の機会が減り、障がいがある場合も同様である。目に見える物理的困難だけでなく、家族問題、精神疾患、アルコールや薬物依存等、様々な問題が絡み合っている。

深刻なのは、HIV感染者の場合である。多くのホームレスの人にとって医療支援が真に必要であるが、一般社会に十分な理解がないために、ホームレスの人が差別を受けることが多い。アメリカではここに加えて、人種や民族の違いによって、富や貧困の集積にあからさまな違いが見られることが特徴的である(アメリカ全土で黒人のホームレスが40%以上を占める)。ニューメキシコではさらに、メキシコから渡ってくる人々が後を絶たず、ホームレスシェルターに暮らす人々の中で多くを占める。しかし、不法移民として捕らえられ本国に強制送還されると、もっとひどい人権侵害が待っている。

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