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更新日:2009/02/07(土)

[コラム] 原口剛/足元の活動を再発見し、つなぎ合わせることから

10年後の社会を妄想する―「大学」を起点として

「10年後の社会」といってしまうと、すこし看板が大きすぎて、なかなか想像しにくい。そこで、私が現在よって立っている「大学」という足元を起点として、そこからどのような社会が可能か、妄想をめぐらせてみたい。

私は、「非常勤講師」なる賃労働に従事している。学生を前にして講義をし、出勤簿に印鑑を押し、試験をつくり、給与明細が届く。この繰り返しである。そんな日々を過ごしていると、大学という閉じられた空間に、ますます違和を感じるようになってくる。

私の講義、言葉は開かれたものでありたい。けれども大学制度の仕組みのうえでは、高い授業料を支払う能力のある学生だけが、私の講義を聴くことができる。そういうことになってしまう。私の言葉は商品なのだろうか? 大学のネオリベ化のなか、授業料はますます高騰していきそうだ。もしこのまま、知や言葉が大学のなかに封じ込められたままならば、私がほんとうに言葉を伝えたいと願う人々、それを必要としてもらえる人々の手元から、私の言葉は遠ざかってしまうだろう。

だからついつい、「大学制度の外側に、もうひとつの大学をつくりたい」、という妄想に駆られる。学びたい人がいて、しゃべりたい人がいれば、それはすでに大学であるはずだ。就職するには何のメリットもない。けれども、生きていくうえで必要な知識や言葉や技術を学ぶことができる大学。

いま、いわゆる「高学歴ワーキングプア」が滞留しているのだから、講師の獲得には困らないだろう。たとえば講義料は投げ銭でどうだろうか。東京ではすでに、投げ銭の仕組みで「地下大学」が開催されていると聞く。

そうなると、ぜひ図書館もほしい。大学制度の内側では、研究室もち教授陣が次々と定年退職している。となると、研究室に所蔵できなくなった膨大な本や資料たちが、路頭に迷う可能性が大きい。これらを地道に集めていけば、相当に質の高い図書館ができあがるだろう。もちろん、この図書館に身分証は不要である。

それらが可能であれば、もうひとつの高校、中学校、小学校ひいては幼稚園も可能なのではないだろうか。もちろんこれも、受験戦争に勝ち抜くための学校ではなく、生きていくうえで必要な知識を学ぶ、ゆるやかな学校である。仮に1時間半の授業を500円で受講できるとする。すると、10人も集まれば講師への謝礼は1時間あたり3000円をこえる。一般の塾よりも受講料は格段に安く、時給は格段に高い。

となれば給食もほしくなってくる。誰でも自由に触ることのできるパソコンも欠かせない。自分たちのメディアや映画館もつくりたい……「大学」を起点とした社会への妄想は尽きることがない。

さて問題は、これらの妄想がどれだけ実現可能なのか、ということだ。もちろん私は、可能だと思って言っている。というのも、これらのことがらは、決して目新しいものではないからだ。(大学非常勤講師 原口剛)

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