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更新日:2005/03/19(土)

[コラム] 米軍再編計画の鍵握る日本
──津田光太郎

米軍に「戦争準備完了」と言わせるな

この二月一九日、日米両政府は、米国務省(ワシントン)で外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(二プラス二)を開き、米軍の世界規模での再編(トランスフォーメーション)に伴う日米同盟強化の指針となる「共通戦略目標」で合意、共同文書を発表するとともに、米軍再編の在日米軍部分の具体案について、この六月をめどに一定の結論をえ、夏には仮合意をめざすことに合意した。

報道によれば、合意に達した「共通戦略目標」は、安全保障環境について、テロや大量破壊兵器の拡散など「新たな脅威」が台頭し、アジア太平洋地域では朝鮮半島の軍事的緊張の恐れや中台対立など「不透明、不確実な要素が残っている」との認識を共有したうえで、「国連安保理の実効性向上」のため、日本の国連常任理事国入りの重要性も指摘し、とりわけ中国に「責任ある建設的役割」を果たすよう求めるとともに、日米は中国との「協力関係を発展させる」としている。つまり、日本政府側が喜びそうな項目を、「口だけならタダだ」とばかりの大盤振る舞いで全て並べた。

そして、「だから」というには、あまりにも無関係な「米軍再編」に伴う指令系統・部隊編成の具体的な米側の提案は、「米陸軍第一軍団司令部(米ワシントン州)のキャンプ座間(神奈川県)への移転構想」であり「横田基地(東京都)の第五空軍と米グアムの第一三空軍の司令部統合」への布陣であって、この基本線さえ揺るがなければ、「その理由付けなどどうでもいい」と言わんばかりだ。

前回、米軍の「ファルージャ」虐殺の時に書いたが、現在米軍が行おうとしている世界規模の再建計画は、中国問題とはなんの関係もない。本当は「何の関係も無い」というのは言い過ぎだが、今そう言い切らないと、大切なものを見誤る。

「戦争」は「政治」、引いては「経済的利害関心」に下属し、決してその逆ではないが、政治に下属する「戦争」というオプションの選択肢は、極めて限られており、大きな軍隊になればなるほど選択肢はますます限られてくる。汎用の武器はあまりにも非効率で高価すぎ、ミサイルには予め敵陣地の地図が埋め込まれて装填され、進軍中の部隊に対して「敵は本能寺に有り」とばかりに矛先を変えることは許されない。しかも、「世界規模の軍隊のプレゼンスを証明し続けなければならない」と信じている米軍にとって、どこかで戦争を始めることは不可避のオプションだと考えざるを得ない。そして、一端戦争オプションを開始するなら、政治的に勝つことが不確定であったとしても、効率的にショーアップされ、軍事的に勝利して見せることが絶対条件であり、そのためにシュミレーション可能な戦場を予め用意することが必要であり、そこを戦場とする戦争計画の立案と、軍隊の再編計画が組まれる。

この目的の下に、米軍以外の要素との協力関係が加わり、実際のシュミレーションを行って、自軍(米軍)死亡予定人数が○○以下、シュミレーション誤差が○○以下である計画が立てば、軍は大統領と米議会に「準備は整いました」と報告することになる。この予め予定に入れられた米軍が勝利して見せるための「戦場」は、明らかに中東に焦点化されており、少なくとも今は決して「中国」ではないというのが上で述べた意味だ。

湾岸戦争の時もそうだった。米軍が動き始めてからどれだけ「平和」を訴えても、残念ながらあの虐殺を止めることはできなかった。もう、あんな思いは二度といやだ。米軍に「準備は整いました」と言わせてはいけないのだ。そして今、まだ米軍はそう言い切ることができないでいる。だからこそ、米軍は「ファルージャ虐殺」と前後する形で、中国潜水艦の航路をリークし、強引に中国脅威論と結びつけ、日本政府から米軍再編成計画への合意を取り付けようと躍起になったし、ヨーロッパ諸国が再編計画に対して必ずしも好意的でないという情報を得ていた日本政府は、この懸案をなるべく高く売りつけようと、アメリカの要求に対して近年になく粘って見せた。

実際アメリカは、今回の日米安全保障協議委員会では、基本合意さえ取り付けられれば十分な成果だった。なぜなら、米国自身の国内外の軍隊再編計画自体が、まだ細部まで固まっていないからだ。この二月三日、米国防総省のヘンリー筆頭次官代理(政策担当)は、今年九月に予定していた「四年期国防見直し」(QDR・同省は四年ごとに包括的に国防基本計画を見直す)の連邦議会提出を、来年二月に延期すると発表した。

日本の選択は、あまりにも大きな鍵を握っている。そのことから、私達は今逃げてなならない。

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