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テロリストは誰
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更新日:2004/08/04(水)

[政治] 参院選敗北でこの国のコース変更を
──グローバルピースキャンペーン・きくちゆみ

アメリカ「明白なる運命」

私が環境問題の解決をライフワークにすると決め、米銀勤めをやめたのは二八歳の時だった。そのとき、私に一番たくさんのことを教えてくれたのが、アメリカ人の環境活動家たちだった。彼らから交友関係が広がったために、良心的で国際的視野をもったアメリカ人とばかりつきあってきた。だから九・一一事件以降に噴出したアメリカの偏狭な愛国主義や、他国の人のいのちをなんとも思わないような差別思想に、私は大いに戸惑った。

同時に、アメリカの中で私の友人たちがごく少数派であることも思い知る。あのように衝撃的な事件を身近に体験すると、これまで平和主義者で、知的で冷静だった人々さえ、いとも簡単に「報復をしなくてはならない」と言い出すことも知った。私は落胆した。人間の精神とはこんなにも脆く、アメリカの平和主義者はこの程度だったのか、と。

アメリカ国民の大多数(八五%)が報復を支持したとき、ブッシュ大統領は多額の軍事費を獲得し、アメリカが勝手に決めた「報復しなくてはならない」国であるアフガニスタンやイラクの人々は、爆弾を落とされ、家や農地を破壊され、殺されることになった。

私は苦しかった。これは自分の知っているアメリカではない、と思った。アメリカの人々がいとも簡単に自由を手放し、「国家安全保障」という錦の御旗の前では、アメリカ人自身への人権侵害にも目をつぶることは、恐ろしかった。しかし、そんな中でも決してあきらめず、地道に平和活動を続ける勇気あるアメリカ人が大勢いた。

退役軍人のフランク・ドリルはそんな一人だ。ドリルとの出会いで、『戦争中毒』のアメリカでの復刊を助けることになった私は、その後、この本を日本に翻訳して紹介した。そして、今年、彼が編集したビデオ『The War Against The 3rd World』を翻訳し、『テロリストは誰?』というタイトルで発表した。

この二つの作品の翻訳と制作を手がけてから、「ブッシュ大統領になってアメリカは急に酷くなった」という考えを、撤回せざるをえなくなった。アメリカ建国を支えた「明白なる運命(Manifest Destiny)」という「自分たち(こそ)が世界を治めるよう神から信託されたのだ」という思想が、北米先住民の大虐殺を正当化した。その思想は、強大な軍事力で全世界の資源支配を試み、そのために他国で何人死のうと意に介さない今のアメリカ政府にも受け継がれ、流れ続けているのだ。

『戦争中毒』はアメリカで一一万部、日本で六万部売れて、多くの人から「目からウロコだった」とのお便りをいただいた。若い層にも受け入れられ、日本の新しい反戦・平和運動を担う人々が大いに活用してくれた。七月二六日には、著者のジョエル・アンドレアスが初来日し、名古屋で二八日、東京で二九日に講演会をする。興味のある方は、グローバルピースキャンペーンのホームページ(www.peace2001.org)を参照してほしい。いつかこれをアニメーション映画にして、劇場公開できるようにするつもりだ。

あの米国を想い、この属国を創る

最近の日本は本当におかしい。どんどん戦争が近づいてくる。でも、多くの人々はまだ気付いていない。まるで眠っているか、操られているような感じだ。言論や表現の自由が奪われてきている。反戦落書きや自衛隊のイラク派兵反対のビラ撒きで逮捕されたり、反戦の意思表示をしただけで警察が家宅捜索したり、学校では日の丸・君が代が強制され、従わない教師が処分されたり、イラクでボランティア活動をしようとして人質になった若者が国会議員から「反日分子」と言われ、一般の人々から嫌がらせを受ける。いつから日本はこんなに不寛容な、嫌な国になってしまったのだろうか。

「二度と戦争をしない」と決めた憲法も、風前のともし火。いつの間にか自衛隊は戦闘地域であるイラクで活動を開始し、いつの間にか多国籍軍にも参加している。憲法とは権力者たちが暴走しないように、国民が権力者たちに守らせるものだ。戦争できる国を目指す権力者にとっては都合が悪い。だから彼らは堂々と海外へ自衛隊を出し、米軍と行動を共にして既成事実を積み上げながら、憲法改正を急ぎ、戦争ができる日本を目指している

マッド・アマノ氏の自民党ポスターのパロディーは、それを見事に表現した。「この国を想い、この国を創る」という小泉首相の直筆を、「あの米国を想い、この属国を創る」と訂正。最初は大笑いしたものの、だんだん笑いが引きつってくる。このパロディーは、まさに現実そのものであるからだ。

それにしても、私たちはなめられたものだ。小泉首相ははっきり「集団的自衛権を行使できない憲法はおかしい」と言い、政府与党は憲法改正案を出してきている。こういう主張をしても選挙で勝てる、という自信と計算が自民党にはあるのだ。彼らには優秀な広告代理店や市場調査会社がついているから、その自信には裏づけがあると考えたほうがいい。

いくつかのうれしいニュース

そんな暗澹たる世相の中でちょっとうれしいのは、六月に完成したばかりの『テロリストは誰?』のビデオとDVDの注文(上記)が殺到していること。連日二ケタ台の注文が来て、すでに五〇〇本を発送した。全国各地に自主上映会も広がっている。この映画を見れば大多数の人が、「こんなアメリカの軍隊とは一緒に行動したくない」「ここまでひどいことはしたくない」と思うだろう。

七月一七日には国立オリンピック記念青少年センターで、第一回東京平和映画祭を開催する。『テロリストは誰?』や『マルディエム』『ヒバクシャ』、『教えられなかった戦争』など、六本のドキュメンタリー映画を、丸一日かけて鑑賞できる贅沢な企画だ。前売り券(二五〇〇円)は、全国のチケットぴあで買える(Pコード:550―490)。詳細は、「東京平和映画祭」のホームページをご覧下さい(www.wa3w.com/tpff)。

もう一つ明るいニュースは、「リボンプロジェクト」という小さな市民グループが作った『戦争のつくりかた』というノンフィクション絵本が、大ブレークしていること。都内の大型書店でベストセラーになったとたん、全国の書店から注文が殺到し、増刷が間に合わない状況になっている。この絵本には今日本で起きていることが、小学生にもわかる文体で、淡々とつづられている。

「おとうさんやおかあさんや、学校の友だちや先生や、近所のひとたちが、戦争のために死んでも、悲しむことはありません。政府はほめてくれます。国や「国際貢献」のために、いいことをしたのですから」

 「人のいのちが世の中で一番たいせつだと、今までおそわってきたのは間違いになりました。一番たいせつなのは「国」になったのです」

ぞっとするけれど、今年成立した有事関連法や、危険業務従事者叙勲制度などの閣議決定などから、日本の現状はまさに『戦争のつくりかた』のとおりに進んでいる、ということがわかる。七月一一日の参議院選挙で与党が歴史的な大敗北をすれば、このコースは変更を余儀なくされる。これを読んでいる全ての人が、自分の良心に照らした投票をしてくれることを願う。

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