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自衛隊
「装備費の使途は明らかにできません」(自衛隊幹部)
更新日:2004/07/09(金)

[政治] お粗末過ぎる自衛隊「人道復興支援」の実態
隠れ蓑としての「復興支援活動」自衛隊員550名・404億円投入の目的は何か?

人員配置総勢550人中、中心業務の給水活動はわずか30人、護衛=130人/司令部・後方に300人という愚

最初に、政府が決めた基本計画の概要を見ておこう。

1 まず派遣期間だが、基本計画では、〇四年一二月一四日までだったが、先のサミットで小泉は、突然「多国籍軍参加」をブッシュに約束。 国会論議も無視、与党への根回しすらなかったようで、派遣期間は、なし崩し的に延長されようとしている。

2 人数:派遣される自衛隊員は約五五〇人なのだが、このうち「人道復興支援活動」に従事する自衛隊員は一二〇人にすぎない。内訳を見ると、支援活動の中心であるはずの浄水・給水活動は、なんと三〇人!(自衛隊員の治療と合わせて現地の医療支援活動を行う衛生隊四〇人、宿営設営後に公共施設復旧活動にあたる施設隊五〇人=合計一二〇人)。一方警備部隊は、一三〇人で、支援活動要員よりも護衛隊員の方が多いのである。

さらに首を傾げざるをえないのが、残る約三〇〇人は、司令部にあたる部署のほか、通信、整備、補給、輸送など部隊全体の後方支援にあたる要員ということだ。この人数配置からしても、浄水・給水活動は、本当の派遣目的の隠れ蓑に過ぎないことが判る。

司令部は、どんな活動をしているのか?輸送部隊は、何を輸送しているのか?が、本当の派遣目的を明らかにする。

3 活動内容は、医療、給水、学校等の公共施設の復旧・整備、復興関連物資の輸送となっており、中心業務が浄水・給水活動となっている。

戦費負担は一兆円??装備充実のためのイラク派兵??

さて、日本政府はこの一連の自衛隊派兵に、合計四〇四億円を支出する。

昨年度派遣費用二四二億円の内訳は、1 陸・海・空自衛隊の派遣準備に要する経費(装備品等の購入・改修経費など)が約二四一億円、2 航空自衛隊先遣要員の活動に要する経費約一億円という。

全体予算四〇四億円のうち、二四一億円が「準備」に要する費用だというのだ。準備に二四一億円(六〇%)もかけるのは、非常識!というよりも、自衛隊はこの金を使って、装備を充実させたかったのではないかと思えるのである。派遣費用の大半は、イラク復興のためではなく、自衛隊そのものの装備増強のために使われているのだ。

使途不明金250億円

実際、派遣費用の内ダントツなのが、陸自の「装備費」。今年度分を合わせると全体の実に七割近くを占める約二五〇億円。しかもこのカネが「何に使われようとしているのかサッパリ分からない」と専門家の間で問題になっている。

軍事ジャーナリストの清谷信一氏は言う。「政府の基本計画にはイラクに携行する武器・車両五種類が盛り込まれました。が、これらはすべて既に自衛隊が持っている装備だから、新規調達費用は不要です。テロ攻撃を防御するために車両に防弾板を取り付けたり、武器を改良するにしても、わずかな金額です。私は防衛庁に二五〇億円の内訳について何度も質問しましたが、『軍事機密上明らかにできない』の一点張り。

二五〇億円は一体どこに消えたのか?

五百倍の費用で8分の1の活動
隊員経費一日七万円/現地採用なら五〇〇円

NGO=650d/日 費用:8000万円/年
自衛隊= 80d/日 費用: 404億円/年

ここで、、自衛隊「復興支援活動」の中心とされている給水活動を見てみたい。

サマワで活動するフランスのNGO=ACTEDは、約七〇〇〇〜八〇〇〇万円あれば、六万人の人々に一年間、安全な水(一日当たり六〇〇―七〇〇d)を配給できるとしている。

これに対し自衛隊は、四〇四億円もかけていながら一日当たり八〇トンしか給水出来ていない。自衛隊は、NGOの約五〇〇倍の費用をかけて、八分の一の給水活動しかしていない。費用効率で言えば、四〇〇〇分の一というとんでもない非効率な仕事ぶりなのだ。

こうした非効率な税金の無駄遣いは、別の問題にも繋がる。今回派遣される自衛隊員には一人当たり、危険手当一日三万円、食費一日三万円、装備などの消耗品一日一万円、死亡見舞金(一億円)は別としても、自衛隊員一人で毎日七万円かかる。

おまけに自衛隊員は、半数は作業、半数がその護衛なので、作業する自衛隊員一人あたり一四万円の費用がかかることになる。一方日本のNGOが行っているアフガンでの救援活動では、現地の人に日当二五〇円を支払っていて、これが現地の雇用を創り出すことにもつながりとても喜ばれている。つまり自衛隊員一人当の費用一四万円は、現地イラク人二八〇名の日当(五〜六〇〇円)分に相当するので、派遣自衛隊員の内半数を現地採用に代替するなら、三万一五〇〇人の雇用が確保できる。ちなみにサマワの人口は一六万人。高失業率の解消が緊急課題であるサマワの雇用環境は、劇的に改善する。

会議に参加するだけの「医療支援」

さらに四〇四億円という金がいかに法外な金かという考察。

イラクでは病院の設備も一九九一年以降の経済封鎖と湾岸戦争、それに追い打ちをかけたイラク攻撃により破壊されて復旧していない。NGOによると、破壊された病院を復興するケースでは、施設改修費用は高くても数億円、抗ガン剤や抗生物質は年間約一億円、人件費、検査用機材の費用や各種経費を足し合わせても、一〇数億円あれば病院ひとつを立派に再建することができるという。

自衛隊は衛生隊(四〇人)が応急措置的な治療の支援をする予定だが、実際は「症例検討会」という会議に参加しているだけという。未だに自衛隊が病院を復興したという報告は聞かない。

外務省が「ジャパン・プラットフォーム」を通じて現地で活動するNGOに支出した金額三億円と比較すると、四〇四億円がいかに馬鹿げた無駄使いかが分かる。

何も残らない「支援活動」

こうした自衛隊活動の有様は、「復興支援」の方法をめぐる根本的な誤謬に根ざしている。

給水班はわずか三〇人、給水能力もごくわずか。医療支援は「ただ会議に参加するだけ」、建設も簡単な修復だけで舗装もできない。陸自の幹部隊員ですら「給水車は現地の水問題の根本的な解決にはならず、最終的には水道の整備が必要。それは中長期の課題だが、自衛隊に出来るのは短期の取り組みだけ」とこぼす。

こうした実態は、自衛隊の支援活動が自己完結的なものでしかないことに起因する。イラク国民の関与が欠如しており、撤退後に何も残らず、連続性・人的資源の育成のための「イラク復興」には役に立たないのだ。

自衛隊員からすれば、危険な地域で、効果の低い「人道支援」活動を、「命をかけて」行なっていることになる。派遣を決定し、イラクに送り込んだ政府=小泉の責任は重大だ。

陣地に引きこもる自衛隊

実は、そもそも、「イラク復興」にあたっても自衛隊を派兵する意義は失われている。

すでにユニセフ(国連児童基金)は、バクダッドなどで毎日一一〇〇万トンの水を供給し、この事業を地元業者に引き継いで雇用を創出してきた。浄水場の復旧工事も推進しているし、昨年八月にバグダッドの水道管が爆破された時には、現地業者を雇って二四時間以内に復旧させている。

その他にも、一四〇万人の子どもを対象とした予防接種キャンペーン、保健員二二〇〇人への研修、八〇万人の女性と子供を対象とした医薬品や保健資材の配布、八五〇〇の小学校に対する教材の配布(一一〇〇万冊以上の教科書を含む)、一二〇の学校の再建、孤児への支援などを行っている。飢餓救済を目的とするNGO「オックスファム」なども、ユニセフと協力して生活復興を進めてきた。

我らが自衛隊はどうか?派兵費用=四〇四億円も使いながら、給水班はわずか三〇人、給水能力もごくわずか。医療支援は「ただ会議に参加するだけ」、建設も簡単な修復だけで舗装もできない。残りの一三〇人は、ただ警備をするだけだ。

オランダ軍と地元部族に護衛されて陣地に引きこもる五五〇人の自衛官より、ユニセフのイラク人スタッフの方が、はるかに効率的に、はるかに安全に、現地のニーズに応えられるのである。

自衛隊派遣の本当の目的は?

こうしてみれば、自衛隊派遣の目的が人道復興支援などというのは、あまりに妥当性を欠く。ブッシュへの忠誠という目的はあるだろうが、これとて、軍事的に見れば、自衛隊は米軍の足手まといでしかない。「戦闘はしない」との建前があり、万が一戦闘に巻き込まれて自衛隊員が捕虜にでもなったら放っておくわけにもいかない。つまり米軍の守るべき兵站線が増すだけで不利なのだ。

いわば「日本も米軍を支援してくれている」というアナウンス効果以外自衛隊の存在意義はない。米軍の本音は「できるだけイラク人との接触を断ち、何もしないで、ただそこにいてくれるだけでいい」というものだろう。「金」だけ黙って持ってくればいいのだ。

では、危険な地域で、効果の低い「人道支援」活動を、「命をかけて」行なう自衛隊派遣の本当の目的は何なのか?

まず、石油利権と復興ビジネス利権確保があげられよう。

「日本はエネルギーの多くを中東に依存しており、イラク、中東が安定すれば日本にとって利益になる」(二月三日の参院予算委員会・小泉首相)

「イラクで命の危険を冒した国だけが(復興事業の)契約を得ることができる」(昨年一二月一一日・ブッシュ大統領)。

こうした発言は、石油利権・復興ビジネス利権確保の観点から派遣の目的を説明するに十分な発言だろう。

しかしそれだけでは、大きな政治的「賭け」であるイラク派兵に踏み切る動機としては不十分だ。先の欧州議会選挙で、イラク派兵を主導した政権与党は軒並み大敗した。派兵とは、与党から転げ落ちるかも知れないという大きなリスクを負う選択である以上、目先の経済的利益よりも戦略的な獲得目標を追求していると考えるべきではないか。

こうしてみると、小泉政権のイラク派兵は、「憲法改正」に向けた既成事実作り、その準備作業の一環であろうことは容易に想像できる。

欧州では、イラク派兵をめぐり、スペインがまず総選挙で与党を敗北させることで撤退を決め、その流れを引き継いで欧州議会選挙でも、欧州市民は「イラクから撤退すべし」をはっきりと表明した。

一方日本は、どうか?年金問題で小泉支持率は下がっているものの、派兵・多国籍軍参加をめぐって、与党に脅威を与えるような「イラク撤退」世論は形成されていない。逆に「国民」が形成され、改憲に向けた準備は、着々と進んでいる。

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