人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people@jimmin.com
反貧困社会編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事
更新日:2004/05/18(火)

[政治] イラク人質事件/「政権維持」の目的を“完璧”に果たした小泉首相の対応──ないと50

イラク日本人人質事件の犯行グループによる三日以内に自衛隊が撤退せねば人質を焼き殺す≠ニいう予告は、小泉首相に対する脅しとしては、まったく意味のないものだ。もし人質が殺害されれば、「テロ憎し」の思いから世論は右傾化し、自民党の支持率は高まる。これは小泉首相にとってむしろたなぼた≠ナあるから、彼は声明文を読んだとき、鼻で笑った事だろう。

これを受け、政府が迷いなく「テロリストには一切妥協しない」と表明したのは、九・一一で決定的となった国際社会の方針に沿った判断でもあり、(その是非はともかく)当たり前のことだった。むしろ、この事件の第一報を聞いて、選挙戦に長けた自民党首脳部がもっとも恐れたシナリオは、「人質が解放されないまま、七月の参議院選を迎える」というものだった。

この場合、「北の人質」「イラクの人質」どちらも解決できぬ小泉首相の無能ぶりが選挙戦の主な焦点となり、自民党は惨敗する。内閣不信任案が出た上での衆参同日選なら、ここで一気に政権交代となる可能性すらあった。だから、自民党と小泉首相は、なんとしても七月までに事件を解決する必要があった。

しかし、かといって三日以内の早期解放は、ベストではない。なぜならその場合、日本の有権者が「(犯人側の要求を突っぱねて人質を見捨てた)小泉は冷たい人間で、(要求をあきらめて解放した)犯人グループこそ人道主義者」と思い込んでしまう可能性があるためだ。こうした世論は、野党に付け入る隙を与えるだけであり、望ましくない。よって、少なくとも三日の期限内に人質が解放される事は、政府としては避けねばならない。政府が(「犯人を刺激してはならない」という)誘拐事件対策の鉄則を破り、相手を一方的にテロリスト≠ニ決め付けたのは、事件解決を遅らせたかった事情のためだ。

ところでこう考えると、二通目の犯行声明とされるFAX文書には奇妙な点が多い。まず、犯人グループが本気で「自衛隊撤退」を望むならば、最初に述べたように「七月参議院選まで事件を引っ張り、小泉首相を失脚させる」のが最善であり、早期の人質解放にはメリットがない。ファルージャの停戦こそが隠された目的だとしても、それは同じだ。なのに、二四時間以内という短い解放期限を明記し、おまけに守れなかったために「誘拐犯=解放を期待した家族をもてあそんだ悪党」との世論形成が決定的となったのだ。

これは相対的に「悪党と対決する小泉政権」の支持が高まる結果となったわけで、このFAX文書こそ、小泉政権にとって事態が好転した決定打だったといってよい。発信元が隣国ヨルダンであることから、「これは日本政府の捏造だ」と指摘する声もあるが、状況証拠から見れば、ありえない話ではない。

ともあれ小泉首相は、首尾良く♀限内の人質解放を阻止した。その後は事件解決に本気で動き出したと見えるが、同時に「誘拐は自作自演説」や「被害者の自己責任論」を官邸周辺記者にリークするなどの世論操作を行った。これは功を奏し、先に帰国した三名など、会見すら開けぬほどのバッシングに見舞われたが、その真の目的は、万が一、七月まで解決がずれ込んだ場合、事件の責任の所在を、与党から彼らへそらすというものだった。

実際、政府発の怪情報に躍らされた世論はひどいもので、「事件の責任は、人質とその家族にあり」などという有様だった。これではたとえ七月まで人質を拘束していたとしても、犯行グループが小泉失脚を実現することは難しかっただろう。結果として犠牲者は出なかったものの、この事件における小泉首相と自民党の対応は、人質救出≠ナはなく、政権維持≠フ一点においてこそ、完璧だったのだ。

続きは本紙 【月3回発行】 にて。購読方法はこちらです。
[HOME]>[政治]


人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people@jimmin.com
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.