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編集一言2008年06月ログ

現実化する食糧危機
 「食糧危機は現実化している」。こう話を切り出した山浦康明氏(日消連)は、福田首相やG8の「アフリカ支援策」は「緑の革命」(高収量品種の導入や化学肥料の大量投入などによる「農業の工業化」)の二の舞になると批判する。食糧危機の主因である分配の問題を棚上げし、食料増産のためのインフラ整備・技術支援を語り、結局、先進国の投資需要を増やすための「支援策」に落ち着くという批判だ。
 緑の革命は、世界の地域農業を衰退させた。G8の処方箋では、食料危機は拡大していくことになる。「もうひとつの環境サミット」で山浦氏が指摘する「食糧危機」についての講演を要約する。
 食料価格高騰の原因は、@農産物貿易自由化による自営小農の没落、A石油高騰、B投機資金の流入、Cバイオ燃料の増産によるトウモロコシの高騰、D新興国の経済成長による食糧需要の増大である。
 しかしG8は、WTO・FTAを推進し、農産物貿易の自由化が進む。この結果、各国の自営農家は、機械化・大規模化を迫られ、多くの農家が借金漬けになって離農。結果、各国の食糧自給率はさらに下がる。輸出国の輸出規制の動きもあって、輸入国(特に貧困国)は食料にアクセスできなくなっている。
 G8では、世界の貿易ルールや生産体制について議論される。したがって、私たちは、日本だけではなく各国の食料自立をどう達成していくかという視点で、議論を進めていく必要がある。
2008年06月28日更新
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肉骨粉に罪をなすりつけた農水省
 分子生物学者の福岡伸一氏が、人が食べるという行為は、自動車がガソリンを燃料として走るということとは質的に違うと語っていた。食べられた食品の分子は、吸収され、人間の体のすみずみに運ばれて、その器官を構成するタンパクに組み込まれるのだという。つまり人の体を構成するタンパクは、1週間前のそれとは異なるものだというわけだ。
 動的平衡。その生命現象を途絶えさせないために、人は食べる。「これを食べたら何キロカロリー」という発想が、いかに貧弱なものか。
 日本でのBSEの発生は、2001年9月10日だった。それから7年近くが過ぎて、政府はようやくその原因が汚染された肉骨粉ではなく、「代用乳」であったことを認めた。ほとぼりが冷めた頃合いだったのかもしれない。
 発生当初から、代用乳原因説は、畜産業界の常識。しかし、農水省は肉骨粉に罪をなすりつけ続けた。何故か。汚染源の代用乳を生産したのが全農系飼料メーカーだったから。
 子牛の哺育期に給飼される代用乳は、脱脂粉乳を混ぜたもの。農家はこれを湯に溶かして子牛に与える。この牛脂に、オランダ産の汚染された粉末油脂が使われていたのだ。
 不思議なことに、政府の研究チームが、この結論を報告したのは2007年5月。発表は12月。しかも事前にリークされ、休日前の夕刊に小さく報じられたのみだった。(M)
2008年06月18日更新
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映画『休暇』
 『休暇』という映画を見た。死刑執行の際、支え役を務めれば1週間の休暇がもらえるというので、進んで「支え役」になった刑務官の物語だった。バタンという音とともに落ちてくる死刑囚を、暴れないように下で支えて早く死なす係のことらしい。
 鳩山法相は立て続けに死刑執行に署名し、7名の死刑を執行した。山口県光市事件では、被害者と称する男が、マスコミに登場するたび、「死刑」を叫んでいる。鳩山は「国民の9割が支持している」とか「あとまだ105人もいる」とか言っている。マスコミも死刑支持が圧倒的だ。私のまわりでも、「中国なら即執行だ」と日本の姿勢を批判する人も多い。「死刑反対」を言うと、「非国民」みたいな雰囲気になってきた。
 70年代初頭の新左翼が「内ゲバ」といわれた殺し合いをしたとき、「悪いやつは殺してもいいんだ」という雰囲気だった。「正義」を背負った人は、とても残酷になる。映画「実録連合赤軍」の最後に若者が言う。『(やめようという)勇気がなかったんだ。』。
 復讐を直接すれば加害者になるが、国家にまかせれば許されるというのはおかしい。人を殺すことで得られる「幸せ」とは何なのだろう。
 10月の世界死刑廃止デーにあわせて、12日に大阪でデモをしようという呼びかけがきた。『休暇』は6月上旬から公開中。死刑をもう一度考えてみたい。(A)
2008年06月16日更新
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地球環境問題の本当の問題は、CO2削減ではない
 神戸で環境大臣会合が開催され、洞爺湖サミットに向けて環境問題が話し合われた。歓迎したり、対応したり、対抗したりする様々なレベルの試みがなされた。
 環境問題に取り組む“NGO・NPO交流広場”では、展示ブースが80以上も出て、行動している市民の多様性を知ることができた。“環境と農業を考える国際シンポジウム”が開催され、「有機農業こそ環境問題を解決する」という主張がなされた。農業問題だけでは参加しない若い層が多かったのが印象的だった。“もうひとつの市民サミット”が開かれた。「どうしてこの会場には若い人がいないのか?」という質問が出るほど、いつもの顔ぶれだった。しかし、必要な問題提起ではあった。これらの試みが、一連なりに見える地点が必要だと思えた。
 地球環境問題の本当の問題は、CO2削減ではない。排出権市場では決してない。食糧とエネルギーである。飽食をやめ、エネルギーをできるだけ使わない。そして、食糧を生産する方法とエネルギーを消費する方法は、生物多様性の確保が必須条件である。
 これらを地域レベルでトータルに実践する場が必要となっている。そうすると、競争や利害を中心に考える発想自身がネックとなる。社会システムの変更が課題となる。「地域から市民が行動し、発言することによってしか、地球環境問題は解決しえない」と改めて思った。(I)
2008年06月15日更新
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不自由な自分
 フリーターユニオンの集会・デモを取材して「不自由な自分」を自覚させられた。コスプレ・女装が当たり前、シュプレヒコールは、五月蠅く、トゲがあり、むき出しの感情がある。マイクを握った一人ひとりがその感情を吐き出していた。自由に生きてきたつもりだったが、いつの間にか世間や左翼業界の常識を身につけてしまったようだ。着ぐるみを着るのに躊躇し、説教くさい言葉が、口を突きそうになった。彼ら・彼女たちは路上を舞台として、恨み辛みや怒りを表現しようとしていた。それは、「伝える」「説得する」という上品な行為を突き抜ける行為であるがゆえに迫力があった。不自由な自分を自覚できた今回の取材の意味は大きい。(H)
2008年06月11日更新
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後期高齢者医療制度に思うこと
 今や各メディアは、後期高齢者医療制度の悪評で飽和状態の感がある。それに加えて政局もあわただしく流動化してきた。それにしてもグローバリズムの競争社会、格差社会の閉塞感は人間の判断を狂わせている。
 各紙のコラムは「半世紀のつけ」とか「大局を見失っている」と批判しているが、マスコミこそがその元凶だという反省がないのが白々しい。あちこちから聞こえてくる老人たちの悲鳴は、筆者年代の心情とも重なって、余計にもの悲しい。
 そこで思うのだが、諸悪の根元は「後期高齢者」(長寿と言い換えても同じこと)などと高齢者を前期、後期とに分断して差別する医療制度をつくるのではなくて、これを逆手に取って政治改革を断行する大局的戦略が今こそ必要ではないか。
 たとえば高齢者を前期、後期と分断せずに65歳から85歳までの20年間を「社会貢献世代」と位置づけ、食糧高騰の時代到来の折柄、日本の農業再生の切り札として新規就農奨励制度とその支援策を国策として打ち出す絶好のタイミングではなかろうか。年金制度改革と併せて、年金プラスαの高齢者所得支援策としても有効であり、世代をこえた合意も得られる筈である。(F)
2008年06月08日更新
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今の日本は3度目の大変革期
 「毎日」の岩見隆夫コラム「近聞遠見」5月17日記の「カーティスの『大変革期』論」という見出しに目が止まった。日頃気にかかることに触れていたので取り上げてみた。米コロンビア大学のジェラルド・カーティス政治学教授によれば、日本の政治は95年ごろから構造改革の試行錯誤が始まるが、新しい仕組みに変わるには20年はかかるだろうという。
 つまりこの2015年までの20年間は、明治維新、昭和の敗戦に続く近代日本の3度目の大変革期として、歴史に残る時代だとカーティスは言う。とすればあと7年間、日本の国民と政治家に明確な意識と変革デザインの備えがあるのかどうか。
 最近の政情の混迷をみるかぎり疑わしいと岩見は言う。筆者は「カーティスの『大変革期』論」には否応なく肯定せざるを得ない。しかし筆者が何よりも嘆かわしく思うのは「左翼」の不在である。(これは別の機会に論じたい)。大変革期には必ず天災地変がつきまとう。ミャンマーの大洪水、中国の大地震はその予兆かもしれない。
 明治維新期には全国的な飢饉と同時に農民一揆が160箇所発生している。昭和の敗戦時には飢餓にあえぐ戦災難民と引き揚げ難民が溢れていた。さて、これからの7年間、日本の「左翼」はどうするのであろうか。(F)
2008年06月05日更新
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全国のフリーターメーデーを連結した「黄金の旅団」
 「『交番の数ほどユニオンを!』という目論みがあって旅団を結成した」―旅団長の鈴木剛さんは目的をこう説明する。東京の「自由と生存のメーデー」は2006年に始まった。警視庁の過剰弾圧で大量の逮捕者を輩出しながらも、07年は、400名のデモ隊にふくれあがった。「東京1ヵ所で大きくなるよりも、小さくてもいいから、分散的に広がるといい」(鈴木さん)と思っていたという。
 第2の目的は、ニート・引きこもり・メンタルヘルス系の人たちを外に連れ出し、「家出の手伝いをする」ことだ。一人で籠もって自傷行為に走るのではなく、外に出て仲間を見つけて欲しいとの願いだ。全国ツアーをすることで、無料で泊まれる所を開拓すると同時に、既存の運動体とフリーターユニオン運動の連結も試みるという第3の目的もある。
 旅団結成を決めたのは3月。1ヵ月あまりで14ヵ所がフリーターメーデー開催を決め、旅団志願者も増えてきたことで鈴木さん自身も自信を深めた。ネーミングは「黄金週間」に引っかけながらも、ネグリの来日中止で、「赤い旅団」を連想し、テント劇団の「風の旅団」も意識した。「貧乏人が黄金を名乗るおもしろさもある」という。
 「所期の目的以上の成果が得られそうだ」と鈴木さんは手応えを感じている。各地独特のデモのスタイルがあり、集まっている人のタイプも違う。熊本は、ニート・引きこもり系の女性が中心だし、福岡のデモスタイルには毎回刺激を受けるという。
 旅団員のたま恵理子(仮名・26才)さんは、2つの仕事をかけもちするフリーター。「小卒フリーター」と自己紹介する。たまさんは、中学1年生で不登校となった。小学生時代は、親や先生の期待通りの「良い子」を演じ続けた。ところが中学入学直後、原因不明の腸炎に。良い子を演じ続ける限界と知った。「このままだと死ぬかもしれないと思って不登校を決めた」。
 旅団参加のきっかけは、フリーター全般労組メンバーの友人に連れられ、全国メーデー実委会議に参加したこと。会議で出会った人たちは、「それまでの大人のイメージを覆すものだった」という。「世の中にこんな大人が居たことが衝撃だった」。「もっと早くこの人たちに会っていれば、楽に生きられたのに」と振り返る。各地のフリーターユニオンの活動も知り、「どんな人たちなのか知りたい」と、旅団参加を決めた。
 旅団に参加して、ブログでしか知らなかった各地のユニオンの人々と出会った。想像以上に自由で活気がある。「引きこもりやニートの人が一歩踏み出したときのエネルギーは凄い。勇気づけられた」という。東京のメーデー参加後、北上するかどうかは未定だ。
 これまで社会運動の外にいた若者たちが、運動の中心になだれ込み、運動を通して仲間を見出し、元気になっていく。社会運動が本来もっていたはずのエネルギーがフリーターユニオン運動には充満している。(編集部 山田)
2008年06月04日更新
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