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▲日本軍のオランダ領東インドへの進攻作戦(ジャワ島/1942年)
更新日:2010/03/08(月)

[海外] オランダ/語り継がれない戦争の記憶
──ユトレヒト大学研究員・小淵麻菜

元オランダ人捕虜の沈黙

私のクラスで日本語を学んでいる若い生徒が、日本へ旅行するということで、私に相談に来た。

彼の祖父は、オランダ領インドネシアに在留するオランダ人。1943年頃、日本軍の支配がインドネシアに及ぶや、仲間とともに茨城県日立市に強制的に連行され、精錬所で昼夜働かされた。

小さな部屋で常に見張られ、十分な食事を与えられず、怒鳴られ叩かれ、 日本敗戦までの2年間、強制労働させられたという。

終戦でインドネシアに帰還後、インドネシア人女性と結婚。そののち家族でオランダに移り住み、子供ができ、孫ができた。

その間家族は、彼から『日本』という言葉を耳にすることはなかった。現在87歳のその祖父は、数年前からようやく、ほんの少しだけ、昔の話に触れ始めたという。

ここに至るまでに彼は、60年以上の心の歳月を費やしたのだ。そしてそのようなオランダ人が、ここにはまだたくさんいる。平和な生活を送りながらも、心の傷を堅く封印したまま無言でここまで生きて来た人たちの、傷の深さを思うと、私は限りなく切ない気持ちになる。

今、日本人がこの国に何千人と住み着き、彼らの体験をろくに知らず、彼らの心の傷に無知なまま、それとは無関係な、ときに無神経な生活を送っていることを、彼らは一体どう眺めているのだろう。そしてまた、自分の孫がアニメを見、Jポップを聞き、自分とは全く逆の、肯定的な感覚で日本を捉えていることを、彼ら自身はどう受け止めているのだろう。

日本に関する日本人の無知

私が日本を離れてアメリカに移住したのは、マサチューセッツの小さな大学町だった。そこは大学関係の外国人居住者の他、たくさんの移民がおり、種々の文化活動が盛んに行われていた。

毎年、終戦記念日の8月15日には、平和目的の集まりがあり、ドキュメンタリー映画を見て語り合ったりしていた。そのような環境で、私は次第に、日本の教科書を基にした戦争の理解が、いかに薄く、稚拙であるかを認めなければならなかった。私が学校で習ったのは、一言で言えば、罪の無い市民を無数に殺戮した原爆の悲惨さ、それを導いた戦争の間違い、である。

しかし日本軍が中国で、その他アジアの国々で、どんなことをしていたかについては、「日本は次第に勢力を拡大していった」などという非常に漠然とした言葉でしか知り得なかった。《原爆投下の必要性》を「正当化」するに至るまで、一体何を日本軍がしたのか、それを私はアメリカで具体的に学ぶことになった。そこで感じたのは、なぜ私は日本のことをこんなにも知らずにきたのだろうという、恥ずかしさと怒りである。

日本人が海外に居住し、そこで現地の人と深い友好関係を持てば、 周りの人たちが自分よりも日本の歴史事実を知っていることに気づかされるだろう。そこで日本に関する自分の無知を痛感し、自分の国と教育を恥じる状況に出くわす。そしてメディアなどからも、私たちは徐々に事実を学ぶのだ。

ここオランダでは、機会があるたび、ホロコースト関係のドキュメンタリー番組を目にする。それと同様に、戦争時の日本軍関係の番組も多い。こんなに様々な事実が映像とともに放映されているにも拘らず、日本から来た日本人は戦争について無知である。この事実は、オランダ人を驚かせ、特にインドネシアに関係のあったオランダ人を憤らせる。

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